その前に、その日の汚点は家を出た時から始まっていました。
それは、携帯を家に置いたまま出てきていた事でした。
いつものように携帯を持っていればと悔やまれるだけでした。
男性がの姿もトイレの建物で見えなくなりました。私は静かに階段を下り
忍び足でトイレ横の壁際に身を屈めました。中から男性の声が聞こえてきました。
お姉さん~もしかしてそっちにいるの~。男性は男用のトイレの中から呼びかけていました。
トイレの正面は壁一枚有りましたが男女の入り口は別になっており
入り口までは左右どちらからも通ることも出来ます。男性が男性用トイレから
出て来たら私も見つかってしまう可能性がありました。私は、意を決して女性用のトイレに
入り込みました。中は2ヵ所スペースが設けられていました。
その内の一つが扉もしまりドアの取っ手部分が開かになっていました。
間違いありません。嫁が中に入り鍵を掛けていました。
私は嫁を救出する気持ちで開いてあった側の便座に上がりゆっくりと中を覗きました。
嫁は便座の蓋をしてその上に座っていました。そして、しきりに携帯を操作していました。
嫁は携帯を持って出ていました。悪いけど俺は携帯を家に置いてきてるんだ。心の中で
呟く事しかできませんでした。男性に気付かれないように小さな声で嫁に声を掛けようと
しましたが、どうしてか思う様に声を出せませんでした。
その間にも男性用のトイレからお姉さん~と男性の声がしていました。
その時でした。ドア鍵に嫁の手が伸びました。慌てて頭を引っ込めました。
カッチという音がしました。私は息を凝らし身を潜めました。
恐る恐る顔を出して確認しようとしましたが、幸いなことに手洗い場に設置していた鏡で
嫁を確認できましたトイレの出口まで行った事までは鏡で分かりました。
私はこのままばれないように歩道まで逃げてくれと祈りました。
嫁に呼びかける男性の声はまだ聞こえていました。
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