そして私はそれからというもの、かすみを忘れるべく、酒を煽り、ソープランドやパチンコにお金を使いまくった。かすみを忘れるためにはそれしか無かったのだ。
そんなある日、勤務中に上司に呼ばれた。
「おい、太郎、本社から電話があるぞ」
「え?本社から?何のようなんだろう?」
そう思いつつ電話口に出た。
「はい、○○ですが…」
「ああ、私は常務の中野だが」
「あ、はい、何でしょうか?」
「今晩本社に来てくれないか?話がある」
「はい、わかりました」
私は驚いた。一体かすみの愛人である常務が私に何の用だ?
私は仕事も余り手につかず定時後に電車に乗って本社に向かった。
入社式以来初めて足を踏み入れる本社ビルはやはりかっこよく、自分とは場違いな感じがした。
そして、決して足を踏み入れることがないだろう役員フロアに行き、指定された常務の部屋をノックした。
「入りたまえ」
「はい、失礼します」
中に入ると広いリビングのような部屋で、そこにはソファセットがあり、かすみが座っていた。
「まあ座りたまへ」
「はい」
私は緊張した面持ちでいたと思う。
「まあそう固くならずに。今日はいい話だ」
「はい」
話はこうだった。
かすみは常務に、今言い寄られている男(私)がいて、工場勤務、そしてかすみも私を大事に思っている。しかし常務との愛人契約の約束があり、待ってくれと言ったが男は納得せず、連絡が来なくなりとても落ち込んでいる。そこで常務に話をして愛人契約を終わらせて彼と付き合いたい、と涙ながらに言ったそうだ。
常務はさすがに大人だから理解があり話を聴いてくれた。しかし常務から直接私に頼みごとをしたいという話になって、今日呼ばれたというわけだ。
「太郎君どうだろう?ものは相談なんだが。かすみは秘書としては大変優秀だ。今会社を辞められては困る。俺が社長に出世するためには無くてはならない人だ。それに俺の特殊な性癖を理解してくれている。こんな女はなかなか出会うこともない。実は俺は30歳くらいまでかすみを愛人にしたいと思っている。ただかすみの将来を縛るつもりはないんだ。今の俺を支えてくれる女でいて欲しいのだ」
私は、何を勝手なことを!25歳が30歳になってるじゃないか!それに特殊な性癖ってなんだよ!と思った。
かすみはうつむいたままだ。
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