呆気にとられて立って居る私に、「上に行って、奥さんに電話を
してこい。」そう言われ、背中を押されました。 私の手は、少し
震えていたのと、電話をして何と声を掛ければいいのか?
頭の整理が出来ないまま、嫁に電話を掛けました。 呼び出し音が
耳元で鳴っています。 河川敷の下を見ると、2人が歩いて行った
逆側を歩き、二人が姿を消した橋桁に向かって忍び足で歩いていました。
その間、嫁に電話を鳴らしたままでしたが、一向に出ませんでした。
一度、電話を切ると友人から連絡が来ました。 「橋桁の所まで来た。
道具入れと思うけど、プレハブがあって橋桁とプレハブの隙間から
少しだけ二人が見える。」でした。 続けて友人から「声は聞こえるから
電話を掛けてやるから、会話を確認しろよ。」でした。
直ぐに友人からの電話が鳴りました。 私は、携帯を耳に押し付ける
様にして、二人の会話を聞きました。 いきなり、やましい声を聞く覚悟で
いました。 やましい声ではありませんでしたが、黒に発展しそうな会話でした。
「こうやって付き合ってもらってありがたいよ。」
「付き合うなんて言われてもね。 お友達だからね。 話位するよ。」
「そうだよな。 結婚してるしな。 結婚していなかっても無理な話だよ。」
「また、そんな事言って。 自信持って下さいよ。」
「由香ちゃんこそ、いつもそんな事言ってくれるから調子に乗ってしまうよ。」
「ほんと~、一度でいいからって思たりする。」
「だめですよ。 そんな事言っちゃ。」
「だよな。 結婚していなかったら我慢できていないかもな。」
「だから、そんな話はだめです~。」
「けど、俺なら退屈させないよ。 こんな美人な嫁さん。」
「退屈って訳じゃないよ。 チョット無関心な気がしてるだけ。」
「こやって会ってることも気が付いて無いって事?」
「もしかしたら気付いているかもしれないけど、今のところは
そんな疑ったような事は言われたこと無いよ。」
「我慢するのってつらいよ。」
「何を?」
「何をって…。だから、由香ちゃんの事だよ。」
「我慢してくれてるの?」
「当然だよ。 我慢していなかったら、とっくに襲てたかもよ。」
「そんな事、したりしないでしょ。」
「もし、そうなたらどうする?」
「そんな事したりしないよね?」
「だから、もしもだよ。」
「もしも?…。 ダメかな。」
「ダメ。じゃなくて、ダメかな。 なの?」
「そういう意味じゃないけどね。」
「じゃー試に、こんな事されたらどうする?」
「えっ!」という嫁の声が、電話あの向こうから少し大きく聞こえました。
「びっくりした。 手を握るぐらいなら大丈夫かな。」
「本当? 少しこのままで居ていいか?」
「いいけど…。」
暫く、仕事の話や何でもないような会話が続きました。
状況はよろしく有りませんでしたが、想像していて事までは
なっていない様だったので安心しました。 私は友人からの電話を切り
改めて嫁に電話を掛けようとした時でした。
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