綾子に、偽の出張で騙して、隠しカメラで不倫情交を撮影したことを打ち明けた。
「ええ・・・知ってたわ・・・いつも一緒に買い物に行くあなたが、私一人で行けっていうから、何かあると思ってそっと覗いたのよ。そしたらあなたが隠しカメラを設置してるのがわかって・・・だから、わざと隠しカメラが一番多く設置されてた寝室で、思い切り見えやすい方向であの人に抱かれたの・・・私を諦めてもらえるように。裏切りがひどければ、私を嫌いになれると思って・・・」
綾子は、全ての預貯金を引き出して300万円を工面し、慰謝料だと言って身一つで出ていった。
「ごめんなさい。あの人を忘れるための結婚なんかしなければよかった・・・あなたの大切な3年間、無駄にしちゃった・・・本当にごめんなさい・・・サヨウナラ・・・」
「綾子・・・あれほどのことをして別れるんだ。絶対に幸せになれよ・・・」
「ありがとう・・・約束する・・・」
数日後、男からも300万円が書留で送られてきたと思ったらその直後、綾子の両親が訪ねてきて、俺に土下座をして、またしても300万円をおいていった。
これで綾子が完全に元妻になった。
俺は離婚の後、かなりヤケクソになっていて、色んな女と愛のないセックスで鬱憤を晴らしていた。
31歳の時には、合コンで現役AV女優と知り合い、爛れたセックスを繰り広げていた。
その女の風貌は清楚なお嬢様で、とてもAVに出るような女には見えなかったが、
「親が作った借金のせいで、20歳の時にAVで処女喪失したんです。セーラー服着せられて、三つ編みでほぼ強姦でした。もう、そこからはヤケクソでした。今、23歳ですけど、もう、何人の男の人とセックスしたか覚えてません。輪姦も、SMも、お尻の穴まで犯されて・・・」
セックスの後、酒を飲みながら始めた身の上話だったが、ここで言葉抜詰まった。
仕事とはいえ、犯されて凌辱の限りを尽くされた女だったが、見てくれはとても清楚で、良家のお嬢様のように上品な美人だった。
AV歴3年目ときいて、女陰はすっかりドドメ色なんだろうと思ったが、仕事以外でのセックスは、合コンやナンパで気に入った男と出会ったときだけで特定にお恋人もなかったらしい。
プライベートと仕事を合わせると、抱かれた男の人数は多かったが、セックスの回数は年間を通して50回もなかったらしい。
「仕事でセックスしていると、プライベートではあまりしたいと思わないのかもしれない。それの、AV女優を恋人にする人にマトモな人はいないでしょう。」
そう話す彼女はとても綺麗で、これほどの美人がAVに出たなら、さぞかし熟れただろうと思った。
「私が売れたのは最初の1年だけ。セーラー服が似合ってた頃は良かったけど、あとは若妻にしては若いし、売れ筋の設定に中途半端で、素人のふりしてナンパされる女子大生とか、援助交際しているOLとか、オムニバス系だったり、輪姦乱交ものや、SMが多くなってる。」
俺は、彼女に本名を尋ねた。
「行きずりの相手に言えるわけないでしょ?」
「付き合わないか?できれば、AV辞めてもらって・・・」
「は?何言ってるの?」
この1年後、俺は32歳でこの24歳の元AV女優と再婚した。
妻は長い黒髪の清楚系な美人だったが、AVを辞めた後に髪を切ったら、清純系のカワイコちゃんになった。
露わになったうなじが色っぽい可愛いお姉ちゃんを嫁にした俺は、生まれた子供と妻を養うために懸命に働いた。
元AV女優だけに性生活のレパートリーが幅広く、NGプレイもないので再婚して10年過ぎた今でもレスになるどころか激しさを増すばかりだ。
充実した毎日を送っていた俺を尋ねてきた60代と思しき女がいた。
深々と頭を下げたその女は、12年前に別れた綾子の母親だった。
「その節は、色々とご迷惑をおかけしました。今更顔を出せる立場ではありませんが、あの子が、綾子がこの世を去りましたので、お知らせしようと思いました。」
「そうですか・・・綾子、亡くなりましたが・・・それは、ご愁傷様です・・・」
「それから、これ・・・綾子が産んだ男の子なんですが・・・今、小学5年生になったんですが・・・」
見せられた写真には、俺の子供の頃にソックリな男の子が写っていた。
「この子が幼稚園になる頃、綾子の夫が、綾子の下の子と兄妹なのに似ていないことに気付き始めたんです。それで、この子が小学生になる直前、DNA鑑定をしたら、上の子は綾子の夫の子供である確率は限りなくゼロだと分かり・・・」
「俺の子だと?だからなに?勝手に種付けして略奪婚した女から生まれた子供が、元の夫の子供である確率もゼロじゃない。だからこそ、後々揉めないように父子関係不存在の申し立てをして離婚したんじゃなかったっけ?」
「・・・・あなたに育てて欲しいと言いに来たのではありません。私たちの大切な孫ですから・・・ただ・・・綾子が・・・」
綾子の再婚した元不倫相手は、上の子が自分に似ていないことに気付き始めると、綾子を風俗で働かせて自分は遊び呆けるようになったらしい。
そして、また新たな女を見つけて、上の子のDNA鑑定結果が出たら、綾子に離婚を言い渡したそうだ。
綾子は、二人の子供を抱えて働きづめで、子供に食わせるために自分はロクに食わず、ついに過労で倒れ、そのまま多臓器不全で亡くなったそうだ。
綾子は、亡くなる間際に、俺に、上の子が俺の子供だということと、俺を裏切った罰が下って惨めな最期を迎えたことを知らせて欲しいと言ったそうだ。
「分かりました。確かに報告を受けました。」
俺は冷たく言い放って、綾子の義母と別れた。
俺は、綾子を弄んだあの男を恨みつつ、なぜか涙のひとつも流れなかった。
綾子とはちゃんとサヨナラをして別れたというケジメがあったからかもしれない。
空を仰いでも、綾子の笑顔は浮かばなかった。
ただ、綾子の母親だけが不憫だった。
「絶対に幸せになれよ・・・」
別れる時に祈った元妻綾子の幸せは、叶わなかった・・・
元妻綾子は、果たせなくなった約束を抱いたまま旅立った・・・
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