翌朝、私が起きると既に妻がキッチンで朝食準備をしていた。
そして、また妻と二人っきりで朝食をとった。
私は思い切って妻に切り出した。
一昨日の夜はどこで何をしていたのか。
いったい何があったのか。
妻は食事をするのをやめ、両手を膝の上に置き黙っていた。
が、少しして話し出した。
妻曰く、私のマンションに来る道中、少しでも交通費を浮かそうとして一般道に降りたが途中の山林でガス欠になってしまったと言う。
携帯を見ると充電が切れていて、周りは車が全然通らなかったので途方に暮れ諦めて一人で車を押していたら、朝方トラックが通り近くのスタンドまでけん引してもらい、その後ガソリンを入れてこのマンションに着いた。
やっと着いた私の部屋に入ると、疲れがドッと来て寝てしまったらしい。
妻の車は軽自動車なので、平地であれば妻一人でも車は動くだろう。
話の内容だけなら、つじつまは合うように思えた。
だが、ガス欠になんか本当になるのか。
妻は運転が好きで、ほぼ毎日乗っている。
今回ははじめから長距離移動はわかっているのだから、高速や一般道の山林を通る前にガソリンを普通入れるだろう。
正直、納得はしていないが、今の妻にそれ以上は聞く気にはならなかった。
朝食の片付、掃除、洗濯・・・一通りの家事を終えると妻は変えると言って玄関に向かおうとしたとき妻が立ち止り、駐車場まで送ってほしいと頼んできた。
これもまた違和感だ。
以前来た時も私が駐車場まで送ろうとしたが、妻はもう玄関まででいいからと言って半ば強引な感じで玄関のドアを閉めたぐらいだった。
だが、私は妻の言う通りに駐車場まで一緒に向かったが、部屋を出てから妻は私の陰に隠れるようにしている。
両手で胸にバックを抱えるようにし、背中を曲げ体を小さくするような体勢で。
駐車場につき慌てるように車に乗り込みエンジンを掛け、そして私の方を見て、
「本当にゴメンね。
ごめんなさい・・・。」
と、だけ言って逃げるように帰って行った。
私には、泣いてるようにも見えた。
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