そんなとき、
ある人物から久し振りに飲もうと誘われました。
ある人物とは、
私の会社の一番の取引先の重役で、
名は富永さんとしておきます。
そしてその取引先とは、
私の会社が窮地に立つきっかけとなった、
部下の裏切りによって失った取引先でもあります。
いよいよ万策が尽きかけていた私は、
藁をもすがる思いで再びその会社に、
頼み込みにいったのです。
そこで私の話に耳を傾けてくれたのが、
その会社のトップの親族に辺り、
当時から力を持っていた富永さんでした。
問題が起きる以前から懇意にしてくださっていた富永さんは、
そこまで言うならといただいたチャンスを無事掴み、
私の会社は再びその取引先に扱ってもらえるようになり持ち直したのでした。
それからも富永さんは私に親しくしてくださり、
我が家に招いて酒を御馳走したこともありました。
富永さんは非常に気さくな方で、
にこやかで人当たりの良い方でしたが、
年齢は私より3つ年上程度なのに、
年相応な見た目の私と並ぶと、
10は老けて見える見た目でした。
頭髪はかなり薄く、
体重は100kgは越えてると自分で話して笑っていました。
人柄はいいのですが、
見た目と汗かきなところから女性に縁はないのか、
いまだに独身でした。
ただ私からしてみればとてつもない恩人であることは変わりません。
酒の席でひとしきり世間話も終わると、
富永さん「どうなの?
ケイスケさんとこは?
もう1人ぐらい子供つくるの?」
と話を振ってきました。
「いやー、
きっともうないですね。
すっかりご無沙汰ですし(笑)」
富「あらあら(笑)
奥さんから断られるの?」
「そういうわけではないんですが…
仲は悪くはないんですが、
そういうことしようって感じになりませんね(笑)」
富「そう(笑)
あんなに可愛くて若い奥さんなのにもったいない(笑)
そんなこと言って、
まさか遊んでるんじゃないの?(笑)」
「いやまぁ…ははは(笑)」
富「こりゃモテる男は違うねー(笑)
あんな若い可愛い奥さんいて、
浮気して(笑)
奥さんまで浮気してたらどうするの?(笑)」
「ははは(笑)
まぁ別れると言われなければいいかなって感じで(笑)」
富「余裕のある男は違うねー(笑)
ほら(笑)
私なんてこの通りですから(笑)
はっはっは(笑)」
富永さんは自分の頭と腹を指差し、
笑っていました。
酒の席での冗談じみた話でしたが、
アカネが浮気とは何故か思いもしていなかったことに気付きました。
しかしまぁ仮にしていたとして、
今の明るいアカネのままなら、
それでいいと軽く考えていた私でした。
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