車を降り、フェンス裏に隠れた私は、嫁に1つ伝える事を
忘れていたのを思い出しました。 慌てて嫁に電話をしました。
「いいか。 男が駐車場に入って来たら携帯をつなげたままに
しろ。 形態は運転席の下にでも隠しておけ」
「そこまでしないといけない?」
「それならいいよ。」と言って、嫁と話しながらフェンスの影から
出て行くと。「分かったから」と言って私の指示に従うしか
ありませんでした。 暫くすると、向こうからライトの明かりが見えました。
嫁からも着信がありました。「これでいい? あなたが言ったから…」
車が近づいてくるスピードが思わぬ早かったので、嫁も話の途中で中断しました。
「ガサ、ガサ。」という音が最後に聞こえました。 男の車が横に停まりました。
社用車のワンボックス型でした。 少しの間、身を屈めていました。
「ドン」っとドアの閉まる音が、嫁と繋がっている携帯から聞こえました。
男が車に乗り込んだのが分かりました。
「こんばんは。」
「すみません。急に連絡して」
そんな会話が聞こえてきました。 ブロック塀のフェンスの穴からそっと
車のフロントを見ました。 少し離れた駐車場の外灯の明かりが男の顔をボンヤリと
分かる程度に照らしていました。 車に乗ったばかりの男が
「チョット待ってて、飲み物買ってくるよ。 何がいい?」
「ありがとう。私は……で」 そんな会話の後、車から降りて来ました。
確かに、車から少し離れた所に自動販売機がありました。 車から降りた
男の後ろ姿を目で追いました。 上下、黒のジャージ姿。 背丈も小さい。
自動販売機の前に男が立った時、販売機の明かりで男の顔もハッキリと見えました。
少し離れていましたが、髪は薄く、顔もポッチャリした感じでした。
「えー45歳? 55、56?」思っていて以上に老けていました。
あんな男が嫁を? 私がイメージしていた男とのギャップにより一層、嫉妬以上の
何とも言えない感情がこみ上げました。 飲み物を買い、戻って来る男。
距離が近くになるにつれ体型も何となく分かりました。 一言で言えば
「小太りのハゲたジジー」です。 なんで、こんな男を嫁は受け入れたのか?
嫁の気持ちが理解できませんでした。 車に戻ってきた男と嫁の会話が始まりました。
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