風呂場の明かりが点いたま、まずまずの時間が経ちました。
ほんの数ミリカーテンを捲り、その隙間から観察していた私の
手も疲れ、立っているのも少し疲れてきた頃でした。
少し開けた窓の隙間から嫁の顔が見えました。 それにしても
今までこんなに長風呂をする嫁は私の知っている限りではありえない程の
長い風呂だと感じていました。 やがて、その理由を知る時が来ました。
外で足音が聞こえました。 小さい足音だったのが、ハッキリと聞こえる足音に
変わりまっした。私は、覗いていたカーテンの位置を変え足音が聞こえてくる
旧家の正面側(庭側)に目をやりました。 その旧家の陰から現れたのは
健ちゃんでした。 その足音と同じして、風呂場の小窓が閉まりました。
嫁も足音、異変に気付いて窓を閉めたのだと思いました。 風呂場の明かりも
直ぐに消えると思いましたが、明かりは点いたままでっした。
健ちゃんは、風呂場の小窓の前まで来ると立ち止まりました。 健ちゃんの
大胆な行動にもビックリしました。 まず、ここまで来るにしても
足音を消すようなことも無く、普通に歩いて来たからです。 放れの家の中から
覗いている私ですら物音には敏感に行動していたのに、当たり前に音など気にする
素振りもありませんでした。 私は、思いました。 これは、健ちゃんだから
普通の人なら警戒したり足音を立てるとヤバイと思う事が、健ちゃんの
判断能力では、そこまでは考えられない判断できないのだと。 それにしても、
なぜ、まだ風呂場の照明は点いているのか? 照明は点いたままだが、嫁は異常に
気付いて風呂は出たのか? そんな事を考えている間にも健ちゃんの行動は私を
更にビックリさせました。 古い建物なので、風呂場の壁は昔のままトタン板を張った
壁でした。 錆びて、小さく穴が空いていたり場所によっては、捲れ掛けている部分も
あったと思います。 私は、息を凝らして健ちゃんの行動を覗いていました。
初めは、風呂なの中から漏れているであろうトタンの小さな穴に顔を近づけていましたが
少し捲れていたであろうトタンの部分を見つけたのでしょう。落ちていた、石や
小枝を使って、捲れ上がったトタンの隙間を広げていました。 その行動も普通で考えたら
覗きをする人間がする行動ではありませんが、健ちゃん取っては、中を覗く事
その為の方法しか考えられないのだと思いました。 しかし、こんな状態でも嫁はまだ
風呂にいるのか?とも考えながら健ちゃんの行動を覗くしかありませんでした。
すると、風呂場の小窓の向こうに嫁の姿がボンヤリと映し出されました。
窓のガラスも昔ながらの薄い、すりガラス製だったので、ぼんやりと確認できました。
ガラスの越しにみえる嫁の姿からして、今は立っているのだろう。
すると、今までは風呂場にいて湯船に浸かっていたか、何かしらはしていたのだろうと
私の想像できる限りの事を想像しました。 とうとう、健ちゃんは私の想像というか
理解できない行動をとりました。 ガラス越しに見えた嫁の影。 それを直視すべく、
窓に手を当てたかと思うと、何の躊躇も無く窓を開けたのです。 驚く嫁の姿が飛び込んで
くると私の方が、身構えました。 身構えた私をビックリさせたのは、驚いた嫁の姿ではなく
何も気づいていないかの様に平然と立てった状態で髪を洗っている嫁の姿でした。
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