健からも嫁からも一向に連絡が来ませんでした。そして連絡が来たのは
嫁の方が先でした。「健君。もう寝てるかもしれないね。家の近くまでは
戻ってきたから。けどね。このままだとまだ家には帰る事が無いと思う。」でした。
「起きてますよ。家の近くまで帰ったんですね。安心しました。けどまだ帰れそうに
ないいて。」「今、近くの船着き小屋と言うか外に有るベンチに居る。調度、暖かい
飲み物を買いに行ってくれてる。」「それでどうなんですか?」
「実話ね。キスをされた。健君には正直に言うね。少しだけど触られた。
途中、抵抗はしてみたけどね。それで今、飲み物を買いに行ってくれたところ。戻ってきたら
どこまで抵抗できるか自信がないよ。」でした。私は、その内容を読みながらも靴を履き
思い当たる場所に向かうべく玄関を出ました。普段、玄関先に放置状態だった自転車に乗り
ペダルを踏みました。嫁に返事を返す間もなく「帰って来たから」と一言だけ嫁から連絡が入りました。
思い当たる小屋の近く間ついた私は、自転車を止め静かに歩いて船着き場に向かいました。
小屋は数個並んでありました。薄暗い街灯が微かに周辺を照らしていました。
一番奥にある小屋まで近づいた時でした。人の声が聞こえました。
私は小屋の裏に回りました。 漁をする時に使う残骸が積まれていました。
その奥にポンプ室らしい小さな建物が有りました。私は、建物の陰に身を隠しました。
声は聞こえましたが、姿が確認できませんでした。建物から身をのり出し
小屋に近づきました。小屋の横に有るコンクリ―ブロックで囲われた中から声は聞こえていました。
積まれていた運搬用のパレット板の上に足を掛け錆びた網目の枠から中を確認しました。
扉は無く、街灯の明かりで中の二人を照らしていました。
二人はベンチではなく、中に積んでいた発泡スチロールの箱の上に腰を降ろしていました。
私には二人の後ろ姿しか見えませんでした。すでに男は嫁の肩に手を回していました。
次第に嫁の頭も男の方に乗せていったのが分かりました。
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