店に行ったら、私が知っているヒロコの常連さんで埋まっていた。
隣の客が私に「ヒロコちゃん、結婚するから今日で店を辞めるんだって」「えっ、うそ。誰とですか」「一人っ子で家の後を継がなければいけないので、先々週、見合いしたんだって。急に店を辞めるから来てってメールが来たんだ。」
継ぐも何もヒロコの実家は父母共に教師なのに。嘘を付いて店を辞めて、あの男のところに行くのかと姑息な女だと思った。私は呆れて帰ろうとしたが、ママに引き止められた。
店を閉店してから、私を含めて店のスタッフと送別会をした。
主役のヒロコも女の子達にも無視されていたから、その場にいる私は場違いな感じがした。
その中でママだけが私に気を使い、優しく接してくれたが、居た堪れない場と時間なのは変わらなかった。
少し眠くなってきて、うつらうつらしていたとき、目が覚める展開が待っていた。
ヒロコを寝取った、あの男が店の奥からさっそうと登場した。
ママが「ヒロちゃんが結婚する人で~す。何と出来ちゃった婚で~す。ヒロちゃんのお腹の中には彼の赤ちゃんがいま~す。みんな拍手。」
拍手と歓声の中、その日、一番の盛り上がりを見せ、女の子達からキスコールが。
私が今まで見た事のない笑顔でヒロコの方から顔を男に近付けキスをした。
惨めで死にたい気持ちになった私は帰ろうとドアの取っ手に手を掛けたとき、ママが私の肩に手を掛け「現実を直視しなさい。」と、肩に掛けた手を不自然に揺すった。
長くなりそうなので、ここで一旦止めます。
夫婦のあり方、継続する事の困難さなどを考えさせられる日々でした。
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