「バレてないかなぁ。」私がいたことを妻に気付かれたくなかった。
靴はしまったというのは覚えている。空き缶はゴミ箱に入れた。ソファまわりは何も置いてないはず。
クローゼットはダメだな。バスルームも濡れてるし...。
さっきまでの自分を想い起こそうと必死になった。アシがつく事を不安がる空き巣の心境だった。
「まぁ、そんな事どうでもいいや。弁解しなきゃなんないのはあっちなんだし。」と考えるのをやめた。
人目を避けたくて、こんな時間に帰ってきたんだな。...ということは、朝までには(男は)出ていくだろうと思った。
案の定、4時を過ぎた頃に玄関に人影が見えた。暗くて顔は見えない、声もこ聞こえない。
が、あの男に違いないと思った。
1時間半近くは家にいたことになる。「やっとかよ。あいつ(男)、もしかして家でも?」考えるとムカついた。
男らしき人影が家から離れ始めた。きっと意気揚々な感じだろうが遠すぎて判らなかった。
「あいつ(男)は今度で良い。声をかけるのは今ここでなくても良いよな。」と思った。
少しでも早く帰りたい。余韻を残してるはずの妻のところに。
家の門灯が消えた。
私は車を静かに出し駐車場に戻った。エンジンを留めて大きく深呼吸した。
刺激は充分過ぎるくらいもらった気がした。眠気なんかない。みなぎっていた。
「さぁ...、帰るとするか。」
思いっきり強くドアを締め、家に向かった。
(続きはまた)
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