夜中2時過ぎ。少し寒気がし、うたた寝から覚めた。
堪らなく空腹なのを感じた。帰ってから食べてないのに気付いた。
出張のはずなので妻も当然用意などしてくれていない。
こんな時間だし、まだ帰らない。コンビニでも行って何か買うかと、家を出た。
歩いて7、8分で店、10分程いただろうか。
真夜中、格好をつける必要もない。おにぎりを食べながら家に向かっていた。
家に着いた。玄関にの鍵を出そうとポケットに手を突っ込んだ時だった。
「あれっ?あぁっ!」と叫びそうになった。
つけていないはずの門灯と玄関灯がついていた。
「帰ってるのか...?」驚きすぎて声は出なかった。
その直後だった。家の中からかずかに声らしき音が聞こえた。
「笑い声?会話だ..!」男と女が会話しているように聞こえてきた。
妻とあの男が2人で家の中にいるという事を悟った。
どうしようもなくうろたえ、動揺した。
足音を殺すように家を離れた。とりあえずそこにいるのは不味いとだけ思った。
「どうしよう...どうしよう...」
普段格好つけの私が、誰にも見られたくない程に情けなくうろたえた。
男と知り合いだなんて事を妻は知らない。
夫だなんて事を男は知らない。
そんな2人のいる家、今は入れない。
しばらく近所を彷徨った、たどり着いたのは駐車場だった。
転勤の際、車庫付き物件が見つからず、家とひと筋離れたところに借りていた。
車に乗り込みエンジンをかけた。
「ここでいい...」家の玄関が見える位置を探し、路上に停めた。
思い出すだけで息が上がった。
まさか男を連れて帰ってくるとは、思いもしなかった。
出くわさずに済んだのは奇跡かと思った。
(続きはまた)
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