部屋は静かだった。
自分の吐く息の音が聞こえた。
ソファから体を起こし、上着を脱いで放り投げた。
ワイシャツのボタンを外し、袖を捲りあげた。
「蒸し暑いな...今晩降るか?」独り言を言った。締め切った部屋で汗が首筋を湿らせた。
ビールを取りに冷蔵庫に。左右、部屋を見渡した。
カーテンちゃんと締めてるな...と感心。ダイニングの椅子を引出し座り直して1缶空けた。気が落ち着いた。
「いつ帰ってくる?...かな」また独り言を言った。急に帰ってきた時に慌てたくないと思った。
何分か、頭に何も浮かず中空を見ていた。21時を過ぎているのに気付いた。
「あの男...スマートにやってくれたかなぁ...無茶苦茶なこと...してないかな...」ずっと心に持っていた不安が表に出てきたが、意識して振り払い、また奥に引っ込めた。
「ふぅ...。」気持ちを整理したくなった。
誰にも取られたくない女、自分だけのものにしたい女。まなみ(妻の名)を妻にした一番の理由だ。
もうすぐ5年、飽きてきたとは言わない。慣れ合いになったとも思わない。
刺激だ。心を刺激される事が減っていった気がする。
多分、妻も同じように感じていたんだろう。きっと...。
そんな時、私は妻に大きな刺激を与ええもらった。でもそれは取るに足らない事、男と出歩いただけの事...。
妻から与えられた刺激を私は実感した。理由を知らない妻も私の変化は実感しただろう。
刺激は無くなって欲しくなかった。何よりも妻から与え続けてほしい。
答えはゲーム。妻にハラハラドキドキするゲーム。
それは、妻が歩ける道を作る。言ってしまえば、それだけの事。
あとは妻次第、自分の思うように歩けば良い。どんな進み方をしても私の刺激だ。
道は途中まで、状況次第で変えれば良い。ゴールはないエンドレスゲーム。
「本当、いつ帰ってくるかなぁ...」またまた独り言を言った。
(続きはまた)
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