人の気配も少なく成ったロビーのソファーに座り話をする。
妻も若者に好印象を持ってる様子で。
その時の私の頭の中には、妻と若者が絡み合う様子が蠢いていた。
そんな事は露知らず妻は若者に話し掛けている。
ここには何も飲み物すらないから、私達の部屋でお茶でも飲みながら、もう少し付き合ってくれないか?
と言う。
妻も相槌を打つように若者に話し掛ける。
部屋に戻ると妻は冷蔵庫からビールを取り出しグラスに注ぐ。
乾杯…それぞれにグラスを口元に運ぶ。
元来、アルコールが苦手な私だが、その時には妻と若者の淫らな想像で酔う事もなかった。
飲めない貴方が、そんなに飲むと酔っ払ってしまいますよ。
妻が言う。
そうだな…。
私は少し酔った振りでテレビのリモコンを弄り始める、有料のアダルト映画にチャンネルを合わせる。
妻は慌てた様子で私を嗜めるが、私は構わず若者に話し掛ける。
苦笑いを浮かべ私に相槌を打ちながら若者は妻の方をチラ見する。
画面を意識しながらも画面に見入る事なく三人はテレビから流れる音声に聴きいる。
妻が若者を、それとなく見る。
若者も妻の浴衣の襟元をチラ見する。
私は酔った振りで布団に転がりテレビの方を向く、私の背中には妻と若者。
テレビの向こうには大きなガラス窓があり、それが鏡の役割りを果たし私の背後の二人の姿が見える。
部屋の中は会話が無くなり音声だけが響く。
ガラスに映る二人は肩を並べ無言でテレビを観る、妻は時々、俯いたり畳の上に置かれたグラスを動かしたりする。
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