続きです。
横になって抱き合っていると、二人ともいつの間にか眠ってしまい、携帯の着信音で目が覚めました。向井さんからです。
「はい、もしもし・・」
「おや?昼寝でもしてたのかな?起こしてしまったようだね。実は、家内の実家から筍が送られてきたんだけどね。二人じゃ食べきれない量なんだ。少しだがもらってくれないかな?」
声で寝起きだとバレてセックスをしてていつの間にか寝てたとは言えず、
「いえ、ちょっとうとうとしてました。それはありがとうございます。今からお伺いすればいいですか?」
さすがに持って来てくれるわけもなく、そう答えると、
「いやいや・・もう向っていてね。もうすぐで着きそうなんだよ。もし出かけてたら引き返そうと思ったんだが、安心したよ。じゃあまた後で」
「はい、失礼します」電話を切るなりすぐに妻を起こしました。
「おい、恭子、恭子・・もうすぐ向井さんが来るんだ。起きてくれ」
いきなり身体を揺すられ起こされた妻は「えっ?なに?向井さん?」
まだ寝ぼけている妻に向井さんが来ることを伝えました。
「えぇ・・もう来るかな?」
慌てて起き、下着とさっき着ていた服を身に着け、鏡を見てさっと髪の毛を整える。
電話をもらってから、5分程でインターフォンが鳴りました。妻が出迎えると筍2本とあく抜き用のぬかが入った段ボールを持っていました。
「わざわざすいません、言ってくれれば俺が行きましたのに」
「そうですよ、本当にすいません」
俺達は玄関で向井さんに申し訳なくて頭を下げていました。
「ははっ。そんなに気にしないでくれよ。家内が持っていきなさいと言うもんだからね」
いつまでも持たせては悪いと段ボールを受け取ると、妻が「どうぞ上がって下さい。お茶かコーヒーでも飲んでから帰って下さい」と、言うと
「お気遣いなく・・家内に渡したらすぐに帰るように言われてるんでね。これで失礼するよ」向井さんのとこも普段は奥さんが強いのかな?なんて思い、これ以上気を遣わせるのも気が引けたので「そうですか、本当にわざわざすみませんでした。早速頂きます。奥様にもよろしくお伝え下さい。それと、また来週か再来週の土曜日、しましょうね」
と牌を打つ仕草をして麻雀の誘いを待ちました。
「そうだね。また近々連絡するよ。じゃあ、失礼するよ」
「はい。本当にありがとうございました」とお礼を言ったあと「おい」
と妻に見送りをさせました。
「向井さん、ありがとうございました」
「ふふっ、二人とも気を使い過ぎだよ。それに今日来た理由は、もう一つあってね。
奥さんにもう一度逢いたかったんだよ。博之くんとはその後、夜の方はうまくいってるのかね?」心配してくれた向井さんに「えぇ、なんか不思議で・・私の方が求めてしまうようになってしまって」
「そうか、昨日の麻雀の時、博之くんも嬉しそうにしてたよ。それから・・私たちのDVDも渡したよ。その日に観れるように眠い振りをしていつもより早く切り上げたから、
帰ってから見たんじゃないかな?」
そうです。向井さんは昨日珍しく眠いといって早く終わらせました。それは少しでも早く俺に見せたかった。否、見せつけたかったのでしょう。俺と向井さんの経験の差を、乱れ狂う妻の姿を。
「主人ったら、帰ってきて見たのだと思います。DVDを入れたまま眠ってしまったみたいで、朝、私も見てしまいました」
さすがの向井さんも妻が見たのは予想外だったようで、「そうですか、それで・・改めてビデオとして見ていかがでしたか?」
自分が乱れてる姿を見る。なかなかない経験をした妻に興味本位で聞いてきました。
「私ってこんなにやらしい顔や声を出してたんだって思って、見ながらあの時の興奮が蘇ってきて、一人でしちゃいました」恥ずかしそうに俯き小声で話しながらも、向井さんの質問に素直に答える妻に「私も・・あの日の事を思い出しながら一人でしてるんですよ。
もし奥さんが、またあの日のようになりたいと思ってくれてるなら・・博之くんを裏切るような事はしたくないですが、奥さん自身も博之くんでは物足りないと僅かでも思う気持ちを感じたなら・・・・火曜日の朝、連絡を下さい。家内は趣味の料理教室で昼間はいません。一度きりの関係と言いましたが、奥さんの事が忘れられないんです。
今日はこれを言うため、筍は奥さんに逢うための口実です。どうか、自分に正直になってみて下さい。連絡が来なかった時は諦めます」
一気に話し、それを黙って聞いていた妻は向井さんの気持ちを知り、そして自分の気持ちを改めて認識しました「もう一度だけ向井さんに抱かれたい」と。でも俺を裏ぎる事になる。すぐに返事をせずに「わかりました。少し考えさせて下さい」
「ありがとう。いい返事を待ってるよ。あまり長いと博之くんが心配するね。そろそろ行くよ」
車のエンジンをかけ、運転席の窓を開ける「今日はありがとうございました。お気を付けて奥さまにもよろしくお伝え下さい」
深々と頭を下げて見送りました。
つづく。
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