続きです。
「ふぅぅ・・俺ってほんとバカだよなぁ・・恭子傷ついてなかったらいいんだけどな」
つまらぬ嫉妬心から傷つけたのではないかと、一人反省しつつも、やはり不安はあります。
もし妻が、向井さんとこっそり会っていたら・・俺は許せるのか。
セックスで満足をさせられない俺、何倍も上手く、精力のある向井さん。
俺が女なら間違いなく向井さんを選ぶだろう。
「はぁ、どうしたらいいんだろ・・」
麻雀の賭けが思わぬ仇となり、自分の芽生えた相反する感情に苦しんでいました。
風呂から上がりリビングに戻ると、妻の姿はなく、先に寝室に行ったようでした。
ビールの飲みながら、ふと風呂上りの妻の体を思い出し、ムラムラしてきた俺はまたDVDを再生し、続きを見ました。
俺とのセックスでは見せない、妻が腰の使い方を教わりながら目をトロンとさせ喘ぐ姿。
向井さんの体を舐めながら徐々に肉棒に向い、やらしく舐める姿・・悔しいですが、やはり妻が向井さんに抱かれているのを見るととても興奮する自分がいます。
そして自分の手で処理し、ビールを飲み干すと今度は抜くのを忘れずにDVDをしまい、
妻のいる寝室に行き、起こさぬようにそっと隣で寝ました。
月曜日。
「おはよう」
朝食の準備をしている妻に話しかけました。
「あ、おはよう」
いつもと変わらぬ笑顔。昨日の事は気にし過ぎのようでした。
「いってきます」と仕事へ行きました。
仕事をしていると、11時過ぎ、携帯が鳴りました。向井さんからです。
「はい、もしもし。おはようございます。昨日は筍ありがとうございました。
お勧めの刺身も頂きました。とても美味しかったです」
すぐに、昨日のお礼を言いました。
「お勧め?あぁ、そうか、それはよかった。
博之くん、仕事中に申し訳ない。昼闇にご飯一緒にどうかなって思ってね。
予定はあるかな?」
「いえ、大丈夫ですが、12時半からになりますがいいですか?何か話でもあるんですか?」
こんな風に向井さんに誘われる事もあまりなく、どんな話をするのか気になりました。
「それで構わないよ」
会社近くのそば屋で会う約束をし、俺の質問に答える事なく向井さんの方から電話を切りました。
電話を切った後、気になる事がもう一つ、おそらく刺身の話は妻の作り話だと言うこと。
そして本当はどんな会話をしていたのか。
そんな些細な事が気になるようになっていました。
そして昼休み、歩いて5分程のところにあるそば屋に入ると、既に向井さんは席に座ってました。
「すいません、遅くなりまして」
「いやいや、私の方こそ、急にすまないね。ここの天ざるそばが無性に食べたくなってね。
一人で食べるのも寂しいし、と思って博之くんを誘ったんだよ」
それはただの口実、何か話があるはず。と心の準備をしました。
「そうですよね、ここの天ざるそばは確かに美味しいですよね」
話を合わせ、食事を進めていると、「博之くんに話すべきか、ずいぶん迷ったんだけどね」
来た。と、思いました。
「後からバレるのも嫌だったし、だけど奥さんの為に話していいものか・・でも私にとっては博之くんも大事な友達だから、失いたくないと思ってね。昨日、私のわがままを奥さんに伝えました」
やはり筍の話は嘘でした。向井さんが妻に何やら話したようです。
俺は向井さんがどんなわがままを言ったのか、ドキドキしながら待ちました。
「実はね・・」まだ話すのを迷っているような、真剣な表情。こっちまで緊張が走ります。
「向井さん、俺なら大丈夫です。向井さんを。妻を信じていますから。話して下さい」
「ははっ、そう言われると余計に話しにくくなるな・・でもここまで来て話さない訳にはいかないね。実は・・一度きりと心に決めていたんだけどね、私の体が奥さんを忘れられないんだよ。博之くんには本当に申し訳ないと思っている。
だけど思い出すんだよ。奥さんの声を・・表情を・・中を・・思い出にと撮影したビデオを何回も見ながら一人で・・我慢しようと思ったんだが・・」
真剣に話す向井さん。俺の想像が現実になってしまいました。
もう一度抱きたいと言われたとき、俺に許す気があるか・・
湧き上がる寝とられ願望と独占欲。
「それで・・恭子に何て言ったんですか?」鬼気迫る俺の表情に、
「奥さんの事が忘れられない。もう一度逢いたい。と、言いました。奥さんもあのDVDを見て思い出したようで、恥ずかしそうに一人でしたと。答えてくれました」
やはりDVDを抜き忘れたのは失敗でした。俺ではなく、向井さんに抱かれるのを見ながら一人でしていたなんて・・その後抱き合ったのも向井さんを思い出していたのか。
頭が混乱しそうでした。
「いつ・・ですか?」
「明日の昼、家内がいないんでね。もし奥さんも私と同じ気持ちなら電話をくれないかと、実は最初の夜に連絡先を交換していたんだ。博之くんが奥さんへの嫉妬でどうしようもなかったら私がなんとかするからと。今まで黙っていてすまなかった。
だが、連絡したり、二人でこっそり会ったりなんて事は一切ないよ」
「まだ妻からの返事は・・ないんですか?」
あまりの衝撃に乾いた喉をお茶で潤し、聞きました。
「あぁ、まだ、ないよ」
「妻は・・どうするでしょうか・・?向井さんは連絡が来ると思いますか?」
「正直、わからないね。奥さんが博之くんを愛してるのは紛れもない事実。でも、私との繋がりで何か自分の中に変化を感じたのも事実。奥さん自身もまだ迷っているのだと思うよ。どうしても止めたいなら今夜、博之くんがこの話をして、断るように説得したとしても私は構わない。
その可能性も含めて博之くんに話そうと決意をしたんだ。
もう一度奥さんを抱く事ができるか。
私の好きな賭けだね。
博之くんが奥さんにこの話をせず、奥さんが私に連絡してくる、僅かな可能性に賭けたんだ」
「わかりました。以前、向井さんに器が大きいねと言われましたが、俺はそんな人間ではありません。それに、本当に器が大きいのは向井さんの方です。
俺に話さずバレないように妻を抱く事は容易なはず。それを話せる向井さんに俺なんか勝ち目がありません。昨日DVDを見たとき、妻から話を聞いていたものの、映像でみる妻の姿に聞いたこともないような声に、俺も妻をあんな風にしたいと思いました。と、同時に向井さんに抱かれ悦ぶ妻を見て何とも言えない興奮を覚えたのも事実です。結局妻を向井さんのように喜ばせることはできませんでしたが」
一気に自分が思っていた事を話してしまいました。
「博之くんは本当に正直者だね、奥さんは博之くんのそういうとこが好きなんじゃないかな・・それが魅力なんだと思うよ。麻雀でその性格はマイナスだけどね」
ニッコリと笑う向井さんに「妻が浮気をするのは嫌だけど、向井さんなら・・」不思議とそう思いました。
「もし、妻がオッケーしたなら・・俺では味わえない何かを求めてきたなら・・その時はお願いします。ただ、詳しい話を聞かせてくれますか?」
今回は俺達夫婦同意の元ではない。撮影はおろか、妻から話を聞くわけにもいかず。
「わかった。奥さんから断わりの連絡があるかもしれないし。まだ本当にわからないが、
もしそうなったら水曜にまたここで話をするよ」
「じゃあ、俺はこの話は聞かなかった事に、妻には一切話しません。俺も妻がどうするか知りたいです」
「ははっ、やっぱり博之くんは器の大きい男だよ。そろそろ行こうか」
さっと、伝票を持ってレジに向かう向井さん。
「すいません、ご馳走になります」
「いやいや、いいんだ。博之くんを少なからず傷つけたお詫びだよ」
そう言って向井さんは帰り、俺は会社に戻りました。
つづく。
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