久し振りに会う祖母は驚くほど老け込んでおり、黒色の多かった髪は満遍なく白髪頭になっていました。
私を見るや『よく来たね・・よく来たね・・』と涙を流しながら手をとり喜んでくれました。
早速仏間に通された私は、4年振りに遺影になった父に再会しました。
遺影の父はあの頃と同じ、柔らかい笑顔で私を迎えてくれました。
しかし不思議と私の目には涙はありません。
まだ父の事にこだわっているのか?それも否定はできませんが、それよりも多分父が死んだ事を受け入れられなかったんだと思います。
父を恨み、嫌い、一生会いたくもないといくら思ってはいても本音はそうじゃなく、本当は嫌いにはなれないし会いたくなったらいつでも会えると思っていました。だからいきなり『父が死んだ』『もう会えない』と言われてもピンと来ないのです。
父の遺影に手をあわせ、ボーっと仏壇を眺めている私に祖母が声をかけました。
『純ちゃん今日は来てくれてありがとうね・・お父さんもきっと喜んでいるよ・・』
祖母は、父に似た柔らかい笑顔でしんみりと言いました。
「うん・・本当は健司も連れて来たかったんだけど、2人していなくなったらさ・・母ちゃんが・・怒るから・・さ・・」
『そうかい・・悦子さんが・・』
すると、祖母の顔から笑顔が消え悲しそうな・・いえ、辛さをも滲ませる顔になりました。
「でもね、母ちゃんの気持ちもわかるんだ。父ちゃんの浮気で母ちゃん傷ついてたから・・」
私はとっさに母のフォローをしました。母が怒る気持ちも理解できるから。
すると祖母は、無言で立ち上がり奥の部屋へ行ってしまいました。
どうしたんだろう?と思っていると何か箱の様な物(靴入れ位)を持って戻ってきました。
『本当はね、お婆ちゃんが墓場まで持って行こうと決めてたんだけど・・・純ちゃんや健ちゃんに誤解されたままだと・・あの子が不憫で、不憫で・・・』
そう言って祖母が箱の中から取り出したのは一冊の日記帳でした。
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