トボトボと歩いて来た女の陰が、俺の車のエンジンが掛かっている事に気づいて立ち止まる。
暫く思案を巡らせている様だったが意を決した様に歩を進めて来る。
彼女は車の中に俺の姿を認めると緊張した表情を浮かべて運転席の俺に真っ直ぐ歩み寄って来た。
俺が運転席から降りる。女は小さな声でさっきはすみませんでした。と言った。
女は30半ばと云った印象で襟に小さな花柄が刺繍された白いブラウスに紺色のタイトスカート。
むっちりとした身体つきの色白の女で、さっき見た腰までたくし上げられたスカートから出ていた真っ白な太ももの強烈なイメージのせいか何か男の欲情を掻き立てる様な色っぽさを感じる女だった。
俺は自分の良からぬ妄想を悟られ無いよう女から目を逸らせて忘れモノですか?巾着袋が落ちてましたよ。と言った。
女は、はい。と小さな声で答え、俺が差し出した巾着袋を受け取る。
女は有難う御座います。と小さく頭を下げ踵を返して来た道を戻ろうとしたが2、3歩歩くと突然、俺に振り返って私っておかしいですか?と泣き顔で叫んだ。
俺がえっ?と答える間もなく女はおかしいって思いますよね普通、こんなところであんな事してる女なんてと泣き叫んだ。
私、自分でもおかしいって思います!もう何が正しいのか、自分がどうしたいのか分からないっと一気に話し、肩を震わせて泣いた。
〜つづく
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