そんなある日、主人は出張で娘はたぶん!彼氏とのデート、1人残された私は実家の母の様子を見に行くことにして、あの量販店の駅で電車に乗り出発を待ちます。
始発ですから上手く座れたんですが、発車直前に乗り込んできた男性が私の前に立ちました。
しばらくしてなんか見られているな?とは感じていましたが、若い頃ならいざ知らず、少し丸くなったおばちゃんになんて興味わかないよね?どけ!座らせろ!って念じてるのかしら?なんて思っていると最寄り駅に到着、その男性もそこで降りたようです。
残念ね、どかなかったわよ、私の勝ちねなんて考えながら歩いていると、階段の手前ですみませんと呼び止められました。
大柄でガシッとした容姿からは想像できない、かすれて少し高い声にハッとなりました。
滋だ!と思いました。
滋!?と返事をして顔を上げてしっかり見てみると、年は取ったものの滋の顔がそこにありました。
さすが声でわかったか、“元夫婦”だけはあるな、
変な声だからね、うるせえ!
丁々発止、あの懐かしい若い頃のようなやりとりが自然と続きました。
正直声をかけるかは迷ったよ、万一間違えてたら恥ずかしいしさと笑う滋。
どうして?間違いないってわかってたんでしょ?と尋ねると
あんなキザなことしちゃったしな、どの面下げて声かけるんだって感じじゃん?と、最後の去り際が今さら恥ずかしいと照れ笑いします。
あれは確かにキャラになかった、だよなーとまた照れ笑い、
私が今でもこっちにいるの?とさらに尋ねると、今は別なところなんだけど、母親が亡くなってね、片付けやらなんやらで帰る途中、本当にたまたま偶然前に私が座っていたんだそう。
太ったのに良くわかったねと言うと、変わらないところはたくさんあるし、特に眉のホクロとかな、それに“元夫”だからビビッとくるんだよとまた笑っていました。
どうも前に立った瞬間にあっ!となったようです。
私は母の様子見に帰るところだったのと伝えると、もう暗いし送るわと滋はいいます。
私は50になろうっておばちゃんなんか襲われないからといいつつ、一緒に実家まで歩くことに。
一番危ないのは俺か!と笑って言う滋の言葉に一瞬緊張が走りました。
もしかしたら?という緊張と、実家行くだけだから楽な下着で来ちゃった!こんな時に限って…というがっかりな気持ちとが交錯しました。
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