二年前の事ですが、当事の思い出を記してみよう
と思います。
医療機器メーカーの営業職に就いていた私が都内
からある地方都市へ単身赴任し、二年目を迎えた
春でした。
当時の私は48歳。
支店長として単身赴任していた私には4歳年下の
妻がおり、一男一女も授かっていました。
そんな家族との暮らしも18年の歳月を経ていた
せいか、私が単身赴任する事にも特段反対や支障
も無く、妻に至っては『亭主元気で留守が良い』
を、地で行く有り様でした。
社宅扱いの1LDKのマンションで暮らしていた
のですが、世間では本格的にコロナウイルスが蔓
延し始め、必然的に自炊を余儀なくされていた事
もあり、仕事帰りにはスーパーに立ち寄り、食材
を買って帰る生活を続けていました。
ですが、日々仕事を終える時刻は遅く、スーパー
に立ち寄ってマンションのドアを開ける頃には
21時を過ぎ、自炊での食生活に煩わしさを覚え
始めた、そんな矢先でした。
マンションの集合ポストに投函された宅配食材の
チラシを眼に、下調理後に真空パックされた鮮魚
や肉類に加え、サイドメニューまである内容も確
かめながら、電子レンジで簡易に温め直したり、
軽く煮込めば完成する手軽さも気に入り、その週
末には電話で申し込んでいたのです。
電話での詳細な説明を受ける中、私の住むエリア
での配達時間が15時前後と云う事も聞き、私の
部屋のドアの前に保冷用の発泡スチロールに入れ
られた状態で置かれるのですが、疲れきって帰る
私には大変有難く、また助けられてもいました。
配達は土日祝祭日を除く平日分で、夕食に伴う食
材を依頼していたのですが、私はその年のコロナ
ウイルスの蔓延もあり、夏季休暇にも帰省せず、
赴任先での自粛生活をする事としたのです。
そんな7連休の初日。
独身の頃からお洒落好きで、身だしなみにも気を
使っていた私が美容院から戻った時でした。
マンション前に宅配チェーン店の名が記された車
が横付けされ、ひょっとしたら家かな?と部屋の
前迄私が辿り着くと、躰を屈め、保冷ケースを置
こうとする女性の姿があったのです。
『ご苦労さまです..』と不意に声掛けする私に驚
きつつ、被っていたキャップを慌てた手付きで外
すと、ポニーテイルにした髪を揺らし、すっと立
ち上がってみせた彼女は『いつもありがとうござ
います』と爽やかな笑顔を滲ませていました。
紺色のキャップと同色のスリムパンツを穿きこな
し、第三釦まで開けた深紅のポロシャツ姿はとて
も若々しく、薄いメイクの頬に雀斑を滲ませる笑
顔が、とても魅力的に映っていたのです。
これからまだ配達されるのですか?と私が尋ねる
と、私の住むマンション付近が担当エリアの最終
地らしく、50数軒の宅配を終えた後は、1時間
ほど周辺マンションやアパートのポストに営業チ
ラシを投函し、その後に営業所に戻ると言う彼女。
『関根さん、配達先リストに記された年齢には見
えないですね!単身赴任と聞きましたけど、どち
らからですか?』などと社交辞令も欠かさず口に
し、前日に宅配され、部屋の共有通路脇に戻す事
になっている空の保冷ケースを手にしようと、
再び彼女が躰を前屈みにした瞬間でした。
第三釦まで開けたポロシャツに青白く浮かぶ胸の
谷間を覗かせ、左手に空の保冷ケースを抱えた彼
女が身を起こそうとした瞬間、私は心なしか揺れ
動く乳房に釘付けになっていました。
そして『今後とも宜しくお願いします』と背中を
向けて帰りかけていたのですが、私は冷蔵庫で冷
やしていた6本パックの缶ビールを手に、汗を滲
ませる彼女を呼び止めていたのです。
『ほんのご挨拶代わりなので、良ければご主人と
…』と手渡す私に『わぁ、良いんですか?』と屈
託の無い笑顔を覗かせ、聞けば彼女のご主人も昨
春から東京へ単身赴任され、今春関大に合格した
一人息子も大阪で独り暮らしをしていると言うの
です。
お一人での生活は寂しいでしょう?と言う私に、
寧ろ自分一人で暮らす日常に専業主婦で居る必要
性もなくなり、再び労働意欲に駆られ、現在の仕
事を選んだと言う彼女。
ついでに尋ねた年齢が42歳だと知り、東京へ単
身赴任されたご主人も45歳と聞くと、我が家の
夫婦関係にも近しい年齢から、親近感を覚えたの
は自然なことでした。
この年の夏は炎天下が続き、熱中症で倒れる人も
少なくない中、軽やかな足取りでマンションの共
有通路を進む彼女の後ろ姿を見送ると、スラリと
伸びた両脚に引き締まったヒップラインを携え、
対極に括れたウェストラインが、艶めかしい色香
を放っていました。
そんな好印象を私に残していた恵美子(本名)さん、
私は配達された食材を部屋の中に入れると、侘し
い独りの部屋で、自ずと彼女の事を空想していま
した。
便利なビデオ通話で家族間での近況報告もしてい
たせいか、2年に及ぶ離ればなれの暮らしであっ
ても、不思議と寂しさは感じなかったのですが、
妻とのセックスレスも3年を経、男盛りの身を持
て余していたのも正直なところでした。
そして翌日を迎え、私が洗濯物を取り込もうとベ
ランダへ出たタイミングでした。ベランダからマ
ンションの脇に横付けされた車を望むと、彼女が
操る宅配食材の車両で、リビングの時計を一瞥す
ると、昨日とほぼ同じ時刻でした。
俄かにそわそわする気分に見舞われながら、私は
彼女が近づいてくる気配を部屋内から見てみよう
と、インターフォンのモニター画面をオンにし、
映り込み始めた彼女の様子をそっと伺っていたの
です。
3階の角部屋が私の部屋なのですが、共有通路か
らゆっくりと近づいてくる彼女を捉えると、その
一挙手一投足をモニター画面で見守る私を他所に、
部屋の前で立ち止まり、一旦キャップを外した
彼女が額と首筋の汗をハンカチで拭うと、共有通
路の脇に戻し置いた空の保冷ケースを小脇に抱え、
立ち去って行く後ろ姿まで伺っていたのです。
夏季休暇期間の1週間を介し、月曜と火曜だけは
彼女以外の女性によって届けられたのですが、
何気なくその女性に聞けば、月曜と火曜が彼女の
公休日と知ったのです。
そして夏季休暇期間中の水、木、金曜日と、私は
配達で訪れる彼女を心待ちにし、モニター越しに
映る彼女の姿にトキメキを覚えていました。
そんな淡い恋心を抱く7日間も瞬く間に過ぎ去り、
過ごし易い9月を迎えた頃でした。
食材には配達書兼納品書が添付され、そこで彼女
の名前が小山恵美子と言うのは知っていたのです
が、日に日に彼女を想う気持ちが強くなり、何と
か彼女を誘う口実を練っていた或る日、その配達
書を兼ねた納品書を手に、ふと名案が浮かんだの
です。
よくよくその紙面を見れば、枠囲みされた空欄部
分に、消費者側の意見や感想に加え、宅配食材か
ら抜いて欲しい不得手な野菜等が書き込めるよう
になっていたのですが、私はその空欄部分に彼女
に宛てたメッージを書き込んだのです。
小山さん閉塞感漂うコロナ禍の中、何時も届けて
くれてありがとうございます。私が手料理を振る
舞うので、我が家で気分転換に飲みませんか?
ぐらいな事を書き込み、携帯番号とEメールアド
レスも添え、共有通路の脇へ戻し置く、空の保冷
ケースに入れたのです。
気持ちは駄目で元々。何のアクションも返さなか
ったら諦めようぐらいな気持ちだったのですが、
9/18(土)でしたけど、私のスマホに見慣れな
い番号での着信が入り、スピーカーフォンで応じ
た相手は紛れもなく彼女で、別宅への配達途中な
がら連絡をくれていたのです。
彼女の公休日である月曜と火曜に合わせ、敬老の
日と重なる縁起の良い9/20(月)にお誘いしたの
ですが、二つ返事の快諾で『私も何か持ち込みま
すねぇ』と明るく弾ませる彼女の声は、私の鼓膜
を擽るかのようでした。
土曜、日曜、祝祭日の夕食に至っては、宅配食材
に頼らずに自炊をしていたのですが、以前妻から
好評を貰えた豚の角煮を振る舞う事に決め、前夜
には圧力鍋で作り終えていました。
宴は17時からと連絡を重ねていたのですが、
彼女が私の部屋のインターフォンを押したのは
16時を少し周った時刻で、玄関先で望む彼女の
姿は配達時の印象とは打って変わり、肩先まで下
した髪型に明らかにいつもとは異なる薄化粧を施
し、白い麻のブラウス越しに黒いキャミソールを
透過させると、サブリナパンツから覗く素足が、
夏の終わりを惜しむかのようでした。
そんな彼女をリビングへと招き入れると、男性の
住まいに入るのは大学生の頃以来だと言い、私の
書棚を興味深そうに伺ったり、ベランダからの下
界を展望したりで、女学生のように振る舞う彼女
の姿を尻目に、キッチンで小松菜のサラダを用意
していた私の傍らに添うと、『わぁっ関根さん、
私小松菜のサラダ大好物…』と顔を綻ばせ、ツナ
とざく切りにしたトマトを和えようとする私に
『私がやりますね!』と横に並ぶ彼女からは、
甘いフローラルなコロンが香っていました。
そんな彼女の持つ明るさに癒しを覚えると、彼女
の住まいは隣町にあり、私のマンションまで徒歩
20分の近さだと聞くと『これ、美味しいんです
よ』と持ち寄った地産品の牛タンを食器棚の小皿
に盛り分けた彼女。
そうこうしながら、リビングのローテーブルにお
酒のアテを運ぶ一面さえ見せると、ささやかな宴
を始めていたのです。
お互いに既婚者同志で在る事を意識する様に、私
の妻や彼女の夫の話題には触れず、お互いの子供
達の話題や、学生時代の思い出を応酬させる中、
中学、高校と陸上部に所属し、ハードル競争が
得意種目で、夢中になって練習したと言うだけあ
って、今も見せる無駄の無い均整の取れたスタイ
ルが、何よりそれを物語っていました。
17時を周る位から飲み始め、空になったビール
の大瓶が6本目となった頃には、少しだけ頬を赤
らめる彼女が小さなバスケットをトートバッグか
ら取り出すと、ひじきの炊き込みご飯で握ったお
結びに、塩昆布を塗したもの。それに加えて梅と
しらす干しで握ったものなどが保冷材に挟まれ、
小綺麗に詰め込まれていたのです。
『これ、お腹が空いた時にでも…』と、おもむろ
に立ち上がった彼女がキッチンに向かうと、
酔い覚ましにお茶を入れると言うのです。
時刻も20時を過ぎた頃でしたけど、キッチンに
立つ彼女の立ち姿を横目にしながら、東京に残し
た妻や家族の事なども忘れ、以前から知り合って
いたかの様な不思議な感覚に見舞われ、お茶の準
備を始める気の利く彼女の横顔を眼に、かぶりつ
くお手製のお結びに彼女の愛情を感じ『小山さん、
お結び凄く旨いよ…』と思わず声を上げていまし
た。
そんな私の反応を耳に、急須と湯飲みを手にした
彼女がリビングに戻ると『良かったぁ~』と満面
の笑みを滲ませ、お互いにお腹一杯だったにも係
わらず、食べ終わりの食器類まで下げようとする
ので、私は慌てて彼女を制していました。
開け放ったベランダのサッシから生温い夜風がレ
ースのカーテンを揺らす中、酔い覚ましのほうじ
茶を二人で啜り飲む、静寂な一時でした。
『ご主人、夏季休暇に帰省されないんですか?』
とお酒の勢いに任せて尋ねると、やはり私と同様
にコロナ禍の蔓延を避け、都内で自粛していると
言う彼女。
すると私の真意を汲むように、23歳で結婚され、
翌年には関大生となった一人息子も授かり、19
年も連れ添った夫は家族の一人と言う彼女は、我
が家と同じ夫婦関係である事を如実に語っていた
のです。
気まずく淀みかけた空気を読み、改めて私がお茶
を入れ直していた時でした。
『愛人/ラマン(L’Amant)お好きなんですね?』
と彼女が向ける視線の矛先を眼で追うと、
書棚に投げ置いていたDVDだったのです。
不味いモノ見られちゃったかな?と私が思うのも
無理は無く、ご覧になった方なら判るとおり、
幻想的な映像美とふんだんに盛り込まれた濡れ場
シーンで、話題の作品だったのです。
『この原作、マルグリット・デュラスの自伝的小
説で、世界的なべストセラーだったんですよね、
私は大学一年の時に原作の小説を読んだんですけ
ど、ファンタジックで官能的な小説だったな….』
とあっさりと返す彼女に一先ず胸を撫で下ろして
いると『関根さんDVD観させて貰っても構いま
せんか?』と言葉を続けたのです。
『実はこれ、妻が乾物と合わせて送り届けて来た
んですよ、映画自体の配給は1992年ですけど、
これは2000年に再販された無修正版なんだけ
ど、大丈夫ですか?』と一応は彼女に尋ねてみる
と、是非見させて欲しいと言う彼女。
116分に及ぶ再生を静観する彼女を他所に、
私はシンクに溜め置いた食器類を洗いながら、
時折りリビングのソファーで見入る彼女に視線を
送ると、口許を両手で被い、時にその身を捩って
見せる後ろ姿は、明らかに感じ入っている様子を
標榜とさせていたのです。
このまま抱き付いてしまおうか…。私はそんな
衝動にも駆られていたのですが、自制心が勝り、
そんな行動に移せる度胸もなかったのです。
DVDを見終えた彼女を横目に捉えてもいたの
ですが、少し放心した面持ちを見せながらも、
『映像も凄く素敵ですね..』と満足気な笑みを
溢すと、そろそろお暇しますね?とソファー
から立ちあがった彼女。
『良かったら小山さんに差し上げますよ...』
とケースに戻し入れたDVDを差し出す私に、
『でもそれは奥様に…』と拒む仕草を見せ、
『妻がからかい半分で送って来た物ですし、もう
何度も鑑賞してますから…』とトートバッグの中
へ入れて差し上げたのです。
『ご馳走様でした』と玄関先で笑顔を滲ませる
彼女は夏らしいウエッジソールのサンダルを履き、
駅に向かい、遠ざかる彼女の後姿をエントランス
の外で見守っていたのですが、時折り振り向き様
に手を振る姿が堪らなく愛しく、私は彼女の姿が
視界から消えるまで、意味も無く見送っていまし
た。
そして完全に私の視界から消えた彼女を見届ける
と、電車なら5分と聞いていた自宅までの所要
時間を鯖読み、私は彼女に宛てたメールを送った
のです。
『小山さん、今日はとても楽しかったし、高価な
牛タンや手作りのお結びも大変美味でした。明日
もお休みでしょうから、ゆっくりと躰を休め
て下さいね? 関根 』
とメールを送信し終えた私は温めに張ったバス
タブに躰を預けていたのですが、小山恵美子と
過ごした6時間余りで、久しぶりに覚える高揚
感を、湯水の中で弓形に模らせていたのです。
やがて入浴を終えた私は再びリビングに戻って
いたのですが、スマホの画面に灯る着信メールの
アイコンを見覚えると、小山恵美子からのメール
だったのです。
Re
『関根さん、私の方こそ凄く楽しかったです。
手作りの角煮も凄く美味しくって、おまけに大好
きな小松菜のサラダにも在りつけ、厚かましくも
DVDまで鑑賞させて頂き、今更ながら恐縮して
います。ちなみに明日は通常どうりの勤務ですか
? 小山』
Re.Re
『明日は仕事には変わりないですけど、新規で
顧客になって頂けた歯科医院に最新の医療機器
を納めるんですけど、搬入業者に立ち会う現場
管理だけで、14時過ぎには帰宅してると思い
ます。関根』
Re.Re.Re
『関根さん、明日は私の代わりの担当が
日替わりメニューの食材を届ける事になって
いますけど、内容が夏野菜の残りを使った中華
メニューで、あまり美味しくは無いと思うん
です。なので私がそれとは別に鰤の照り焼きと
高野豆腐を使った美味しい煮物を用意しますの
で、DVDのお礼も兼ね、明日も関根さんの
お宅にお邪魔させて貰って良いですか? 小山』
Re,Re.Re.Re
『正直、私も中華料理はあまり好まないので、
それはありがたいです。それに小山さんなら
何時でも大歓迎ですよ!成城〇井のカマンベール
と棒サラミも買っておきますから、明日のトゥワ
イライトタイムはタリスカーのハイボールでも愉
しみましょうよ?』
Re.Re.Re,Re,Re
『うわぁ、凄く嬉しぃです。私も腕に依りを掛け
て作りますね!日暮れ時の16時にはお邪魔しま
すから 小山』
Re,Re.Re.Re.Re.Re
『了解です!それでは明日、楽しみにしています
関根』
軽やかに弾むメールを小山恵美子と応酬させると、
既に私の心は明日の16時に向かって浮足立って
いました。
そして迎えた9/21(火)の当日。
この日は猛暑に戻ったような好天に恵まれ、少し
歩くだけでも汗の滲む陽気に包まれていたのです。
そんな中で、新規の顧客先で最新の医療機器を
無事納品し終え、自宅マンションに戻ってみれば
14時半を周ろうとしていました。
彼女が訪ねて来るにもまだ早く、自宅から着込ん
でいた作業用の制服を脱ぎ終えると、ひょっとし
たら今日は彼女と…。と独り善がりな期待が胸の
中を駆け抜けると、早々に浴室に向かっていた私
は全身の隅々まで丹念に洗い清めていたのです。
そして汗の退いた素肌にヘンリーネックのTシャ
ツとセットのラウンジパンツに着替え、薄くスラ
イスした棒サラミと食べ易い大きさに切り揃えた
カマンベールを冷蔵庫に納めると、タイミング良
く玄関先に宅配食材が届けられた気配を耳にし、
真空パック詰めされた食材を冷凍室に納め、戻し
の保冷ケースも速やかに共有通路の脇へと戻し置
いていました。
南東向きのベランダからリビングに射し込める黄
金色の夕陽を傍観するさなか、昨夜は興奮の余り
ベッドに潜ったのが25時過ぎだったせいか、
私は束の間の転寝をしてしまったのです。
そんな薄らぐ意識の中、突然鳴動したインター
フォンに飛び起きると、モニター越しに映るその
姿は、時間どうりに訪れた小山恵美子の姿でした。
『今日も熱い一日でしたね…』玄関のドアを開け
るなり、開口一番に発した彼女。
スポーティーな装いを見せた昨日とは異なり、
清楚なパフスリーブから細長い腕を覗かせ、
大胆に開いたVラインの胸元に青白く浮かぶ静脈
を覗かせると、その胸元を留める前釦はワンピー
スの裾口まで続き、リンドウの花柄が散りばめら
れたその姿は、より一層彼女の魅力を引き立てて
いました。
そして我が家へ上がるなり、勝手知ったる様子を
見せる彼女が『お鍋お借りしますね』とキッチン
に立つと、持ち寄ったお手製の料理を保冷バッグ
から取り出し、手慣れた手付きで温め直していた
のです。
『私、昨日は6時間も長居して、祝日なのに関根
さんを疲れさせたんじゃないかと思ってて…』
リビングのローテーブルにグラスを並べ、氷を入
れたアイスペールにマドラーをセットする私に、
キッチンから横顔を覗かせ、私に話しかける彼女。
『全然疲れてなんか無いですよ?DVDにしても
初めから小山さんに差しあげていれば良かったも
のを、私の方こそ気が利かなくて…』
『私こそ無理に観させて貰って、あっ!その保冷
バッグのサイドポケットにお返しのDVDを入れ
て来たので、良ければお時間のある時にでも…』
『お返しなんていいのに….』と私がサイドポケ
ットのDVDを手にすると『白蛇抄』と言うタイ
トルと共に瀬戸の花嫁で有名な国民的歌姫の画像
が掲載され、裏返したケースには38年前に東映
から配給され、水上勉原作の文芸小説を忠実に映
画化した作品と記され、翌年の日本アカデミー賞
では主演の小〇ル〇子が最優秀主演女優賞受賞と
記されていました。
『このDVDは小山さんが買われたんですか?』
と私は冷蔵庫に納めたカマンベールチーズとサラ
ミを取り出そうと、歩み寄ったキッチンで何気な
く尋ねてみたのです。
すると、閉店セール中のレンタルビデオショップ
へ彼女のご主人が出向いた際、店頭のワゴンに山
積された中から見つけだし、彼女が持つ愛読書と
同じタイトルな事と、500円の破格値だった事
から購入されたらしく、現在はDVDプレイヤー
自体も壊れた事と、一人息子への影響も考え、数
あるDVD化された文芸小説のディスクと合わせ、
処分するつもりでいたと言うのです。
『うん、ばっちり!』と丁寧に味見を終えた彼女
は鍋から盛り付けた鰤の照り焼きと高野豆腐の煮
物をトレイに乗せ、リビングに向かって歩み寄っ
ていました。
にこやかな笑顔を携え、リビングのローテーブル
にお手製のアテを並べる彼女に視線を向けると、
上半身を屈めた胸元からレースが縁取る純白の
ブラを覗かせ、程よい膨らみを見せる胸の谷間を、
あからさまに露呈させていたのです。
そして今日は私がホストとばかりに、気忙しく
ハイボールを作る私に、これだけは自慢料理と
言うだけあり、お手製の鰤の照り焼きは絶妙な味
付け加減で、副菜の煮物に至っても、高野豆腐に
椎茸と人参、そしてサヤインゲンが混菜し、素朴
で優しい味付けがハイボールの杯を進めていまし
た。
点けっぱなしのTVからは新型コロナウイルス拡
大のニュースが流れ、何度かの緊急事態宣言が繰
り返される中、私の赴任地に於いても8月下旬に
は対象地域として追加され、最終19となった都
道府県の全てが9月末まで延長される事となるの
ですが、皮肉にも、そんな状況下が彼女が携わる
宅配業界の業績を伸ばしている事実に、悲喜交錯
すると言う彼女。
『暗いニュースばかりで嫌になっちゃうね、一緒
に観ませんか?』と頂いたDVDを左手に掲げて
見せる私に、口角に笑みを浮かべる彼女は、静か
に頷いていたのです。
やがて再生される映像がハイライトシーンを迎え
ていたのですが『当時の彼女、まだ32歳だった
んですよ』と迫真の濡れ場を演じ始める主演女優
を真っ直ぐに見入り、譫言のように呟いてみせた
彼女。
やがて肌蹴た襦袢の胸元に惜しげも無く乳房を曝
し、愛する男の名を咽ぶように連呼するのですが、
『凄い演技力ですよね…。あっ!今日は私が洗い
ますね?』と俄かにその場から立つ彼女は照れ隠
しなのか、キッチンへ向かい、洗い物を始めてい
たのです。
再生される映像は私の想像をはるかに超え、全裸
になる事も厭わず、堂々と自ら乳房を揉みしだく
熱演に度肝を抜かされ、恥ずかしげも無く、疼き
始めたシンボルをラウンジパンツの下に自覚する
と、身の置き場の無い思いにトイレに逃げようと、
私がキッチンで背中を向ける彼女の後ろを通り過
ぎようとした時でした。
『私、この原作となった水上勉の文芸小説も読み
ましたけど、映像としての再現性はラマンより白
蛇抄の方が断然凄いですよね?』
背中越しに落ち着いた口調で話しかける彼女の背
後に立ち止まると、右脚を左脚の踵まで爪先立て
る様に滑らせ『こんなに淫らに恋慕してしまう恋
って、ある意味幸せですよね…』と続けたのです。
『確かに歌唱力だけじゃなくて、女優としての才
覚も有ったんですね、余りにリアル過ぎる演技に
つい...』
私はとりとめのない返答を返し、急ぎ足でトイレ
のドアを開け入ると、わざとらしくトイレの排水
レバーを回し、排水の音色と共に平常を取り戻そ
うとしていました。
時間にしておよそ5分前後。
私がトイレから出るとキッチンに立つ彼女の後ろ
姿は既に無く、僅かな漲りを残したまま再びリビ
ングに戻れば、ソファーの背もたれにその身を預
け、DVDを見入っている彼女の後方まで歩み寄
れば、両脚を組んだ大腿に頬杖をつき、少し前屈
みになってみせた彼女の胸元に視線を落とすと、
透き通るような肌に青白い静脈が浮かび、その胸
の谷間を覗かせていたのです。
そんな私の気配に気づいたのか、彼女が右斜め上
に顔を向ける所作をみせると、理性の箍が外れた
私は、背後から彼女の上半身を両腕で被う様に交
差させ、その首筋に這わせた舌を、更に右の耳孔
へと滑らせたのです。
彼女は一瞬ピクっと肩先を弾ませたものの、私が
その唇を奪った瞬間には両眼の瞼をゆっくりと綴
じ、ワンピ―スの胸元から左手を潜らせる私に抵
抗もみせず、レースが縁取る純白のブラ越し、双
方の乳房を変わるがわるに弄り始めると、左脚に
重ね組まれていた右脚を大きく見開くように戻す
と、その両足をラグの上で爪先立てていたのです。
やがて貪り続けた彼女の唇を解放させ、シャワー
を促す私に対し、既に自宅で浴びて来た言う彼女。
その確信を突く言葉が発火点となると、私は彼女
の左手を取り、リビングと隣接する寝室の引き戸
を開け入っていたのです。
ベッドの裾で向き合うように立つと、彼女はそっ
と私の腰に両手を回し、彼女の顎に左手を添えれ
ば、再び両目の瞼をゆっくりと綴じ、唇をこじ開
けるように尖らせた舌を潜らせると、自らも舌を
絡めて来る彼女は、ラウンジパンツに浮き彫りに
させた私の漲りに右手を添え、その屹立の度合い
を確かめるかのように、縦横無尽に優しく愛でて
いたのです。
夜の帳が降り始めた寝室は仄暗く、ヘッドレスト
で20時を周ろうとする目覚まし時計の時刻を
一瞥し、彼女の胸の釦を一つ、二つと外し始める
私に、重ね合わせた唇を屋に無に外す彼女は『自
分でしますね…』とベッドの上に畳み置いた薄い
パイル地の肌掛けを手にすると、再びリビングへ
と踵を返していたのです。
僅かばかり開いた寝室の引き戸越し、私は彼女が
見せる挙動をベッドの裾に座って静視していたの
ですが、背中を向ける彼女は、リビングのローテ
ーブルの上に両耳から外した群青色のイヤーカフ
を置くと、それはワンピースに散りばめられたリ
ンドウの花の色を拾った物の様にも映り、パフス
リーブの袖を片腕ずつ抜き終えると、下着姿を見
せる彼女は手にしたワンピースをソファーの上に
畳み置き、ストラップの無いフロントホックのブ
ラを外し、後ろ手に回した両手の親指を対のハイ
レグショーツに掛け、半身を屈めながら脱ぎ下ろ
す様は、括れたウエストから、なだらかに続くヒ
ップラインが強調され、ショーツから片脚づつ抜
き取る狭間に僅かに残す黒い毛並みを覗かせると、
三つ折りにしたレース使いのショーツとブラをソ
ファーの上に置き、裸の後ろ姿を惜しみなく覗か
せ、躰に巻き着けたパイル生地の肌掛けを胸元で
留めると、左手の薬指にしたプラチナリングを外
し、リビングのローテーブルにそっと置いたので
す。
やがてベッドの裾で見守る私に向き直し、俯き加
減の顔を覗かせながら、寡黙なままベッドの右奥
にその身を滑らせると、私を背けるように横たえ
ていた彼女。
『此処で奥様ともされたんですか?』と背けた肩
越しに問う彼女。
『妻が赴任先に来る事など後にも先にも無いです
よ』と答えた私は、傍らに横たわる彼女の躰に自
分の躰を添わせ、左の首筋に這わせた舌を、
その先に続く耳孔へと滑らせていました。
うっすらと開けた唇から微かな吐息を漏らす彼女
に、私は胸元で留めた肌掛けを優しく解き、露わ
になった乳房を左手に弄りながら、その頂で隆起
をみせる乳首を捩じるように摘まむと、顎を仰け
反らす彼女は後ろ手に回した左手で私の弓形にな
った陰茎をラウンジパンツ越しに握り捕り、徐々
に粗く弾ませる息使いを見せていたのです。
逸る気持ちに、私を背けて横たわる彼女を仰向け
にすると、想いの外豊かな乳房が外側にたわみ、
程よい大きさの乳輪の上で隆起した乳首を舌先で
転がしてみれば、ツンと肥大してみせる頂がグミ
のような弾力を伴わせると、その感度の良さを自
ら物語っていたのです。
堪らなくなった私はラウンジウェアのTシャツを
ベッドの下に投げやると、仰向けの彼女に覆いか
ぶさり、露わになった乳房を貪る様に舐め回しな
がら、ヘッドレストに向けて両腕を上げさせると、
剥き出しになった双方の腋にも舌を滑らせ、ゆっ
くりと下腹部に向かって舌先を降下させていたの
です。
細いウエストラインまで辿った際には、彼女の左
脚を折り曲げる様に膝立たせ、対極にある右脚も
同様に膝立たせると、既に群青の帳の中で、濡れ
艶めく女陰を目の当りにしながら、敢えて焦らす
ように、鼠径部に添えた舌を繰り返し滑らせると、
そのデリケートゾーンからは昨日と同じコロンが
体温に煽られる様に匂いたち、時折り腰を浮かせ、
吐息を溢す彼女に視線を送ると、顎に当てた右手
の小指を甘噛みしながら、大きく背中を仰け反ら
せていました。
『あっ!そこは汚な…』私がアナルからほんのり
口割けた女陰へ舌を滑らせると、恥ずかしそうに
膝立てた両脚を閉じようとするのですが、内腿に
添えた両手で更に見開くように押し上げると、
アナルの菊の紋様は勿論の事、大きく口割けた小
陰唇に桜色に染まる膣肉を覗かせると、牡蠣肉エ
キスのような潤いを滲ませていたのです。
指先で見開く女陰の先には小豆大の膨張をみせる
クリトリスが芽吹き、這わせた舌先を左右に揺ら
しながら、その沼地の奥へ潜らせた二本の指で、
モールス信号のような刺激を与え続ける私に、
彼女は甲高い喘ぎ声を繰り返すように発し、群青
色に染まる寝室に何度も浮遊させていたのです。
やがて膝立てていた両脚が少しずつ震えを伴い始
め、徐々に加速度を上げ、探り当てたポイントを
責めたてると、大きな喘ぎ声と共に胸元を跳ね上
げ、満ち潮のスプラッシュを放射線状に放ったの
です。
エム字に見開いたままの大腿はワナワナと打ち震
え、粗い呼吸を弾ませる彼女の姿態を傍観してい
た私は、放心した横顔を覗かせながら、その粗い
息使いが治まるのを見守りながら『此処で思い留
めた方が…』といつに無く冷静さを取り戻すと、
既にシーツ代わりとなった濡れた肌掛けを彼女の
背中越しに引き抜き、替えの肌掛けを押し入れの
引き出しから手にして戻ると、エム字に見開いて
いた両脚は真っ直ぐに戻され、逆手にした右手を
額に当てる彼女に、そっと覆い被せていました。
私はベッドの下に投げやったラウンジウエアのT
シャツを手に、再び頭から被ろうと背中を向けた
時でした。
『はしたなく汚してしまって、こんな淫乱な女
じゃ萎えますよね…』と言う彼女を振り向き様に
見れば、つい今し方覆いかぶせた肌掛けを払い避
け、半身を起こした躰に品を作っていたのです。
『後悔しない?』と真っ直ぐに彼女の視線と交差
させる私に、今日はそのつもりで来たと言う彼女。
そして手にした私のTシャツを奪うように取り上
げ、ハーフ丈のラウンジパンツに両手を掛け、
躊躇なく引き下ろしていたのです。
そのまま私をベッドへ引き上げようとする彼女に
応じ、踝に留まるラウンジパンツを足の指先で脱
ぎ払い、彼女の傍らで全裸になった仰向けの身を
曝すと、半身を起こした身を更に屈めながら、僅
かな漲りを残す私の陰茎を左手に支持し、握り捕
えた右手で優しく扱き始めていたのです。
瞬く間に反応を示し始める私に、時に握り捕る右
手の指にギュッと力を込めると、陰嚢から幹にか
けて掬い舐めるような舌使いを見せ始め、その四
方から繰り返される舌戯はあたかも味わいつくす
かの様で、雁首に舌を添わせ、円周を描いてみせ
る妙技に私の欲望の証は著しい屹立をみせ、矢次
ぎ早に口腔へと咥えこまれると、激しく繰り返さ
れるスロートと共に、彼女の口角から零れる涎が
糸を引き、その淫猥な光景を眼下にしながら、彼
女が持ち合わせる技巧にも驚く半面、私はその例
えようも無い快感の静寂に堕ちそうになり、慌て
て彼女を仰向けに組み伏せると、自ら両脚を拡げ、
掲げた両腕で手招くような素振りをみせたのです。
ほんのりと口割け、しとどに濡れそぼる女陰に亀
頭をあてがい、ゆっくりと沈めようとする私に
『膣外にお願いしますね?』と眼を背けながら言
う彼女。
避妊具の用意すら無かった自分を恥じながら、
黙って頷いてみせた私が、その沼の奥へと沈めら
れる陰茎を見納めると、私の背中に両腕を回す彼
女は、感慨深げな吐息を溢したのです。
数年振りに体感する挿入感は魔性の沼地にもピッ
タリとフィットし、まったりと緩急をつけながら
突き返すさなか、私の背中に回す両手の指に力が
込められると、徐々に力強く突き返す度に食い込
む爪先の感触を背中に覚え、その結合部から漏れ
出る湿りを帯びた音色が勢いを増すと、彼女は私
の腰を挟み込むように、その両脚を交差させてい
たのです。
互いに弾ませる息使いは止む事も無く、いやが上
にも互いの興奮の度合いを示す中、私は彼女のタ
イミングを見計らい、緩急をつけたストロークに
加え、左手の親指の腹で小豆大に芽吹いたクリト
リスを同時に愛で始めると、私の腰に交差させた
両脚がブルブルと震えだし、その時を迎える予兆
を伺わせていたのです。
眉間に寄せる皺を浮かべ、一段と高く澄んだ喘ぎ
声をあげる姿態を眼に、更に加速度を上げて腰を
振り続ける私も限界を迎え、白濁色の結晶を彼女
の腹部に放っていました。
互いに放心し切った躰を重ね合い、乱れた息使い
が治まる迄抱き合っていたのですが、自然と唇を
重ね、お互いの舌を貪る様に絡め合っていました。
ヘッドレストの時計は21時を裕に周り、互いの
肩を並べて仰向けに横たわれば、小さく灯る天井
照明の常夜灯を見つめる中、束の間の沈黙が流れ
ていたのです。
『私、どうでした…?』と悪びれもせずに私の右
の鼓膜を擽る澄んだ声に『凄く良かったよ….』と
詫びることなく応えると、一瞬の間を置き
『私も久しぶりに…』と如何様にも取れる言葉を
返す彼女。
すると半身を起こした彼女は私の膣粘液に塗れた
陰茎を手に、ヘッドレストに据え置いたティッシ
ュで、丁寧に拭ってくれたのです。
再びシャワーを促す私に、余韻を遺したままでい
たいと言う彼女は、私の傍らで自分自身を拭い終
えると、気恥ずかし気にベッドから下り、リビン
グで脱いだ着衣をゆっくりとした所作で着直し、
外した装身具を付け終えると『洗面台、お借りし
ますね?』といつも見せる笑顔を滲ませ、トート
バッグから取り出した化粧ポーチらしき物を片手
に、パウダールームへと姿を消していました。
私も寝室に投げやったラウンジウェアを着直し、
化粧直しを終えて戻る彼女を待っていると、もの
の15分程度で姿を現した彼女に『小山さん、車
呼ぼうか?』と会社支給のタクシーチケットを渡
そうとする私に、まだ早いし、歩いて帰りたい気
分だと言う彼女。
一階のエントランス迄彼女とそぞろ歩き、途中で
マンションの住人にすれ違うと、何も動じる事無
く『コンバンワ』とスムーズな会釈さえ交わして
みせたのです。
『関根さん、洗面台の収納ミラーの中に置かせて
貰ったモノが在るので、後で観て置いて下さいね
?』と意味深な言葉を別れ際に告げ、駅に向かっ
て歩き始めた彼女。
そんな彼女の後ろ姿を見送ると、私は未だその感
触が遺る陰茎を抑えながら、部屋のドアを開け入
ったのです。
そして彼女が言っていた洗面台の収納ミラーを開
けて見ると、10枚ほどのスキンが一枚の便箋に
包まれ、さりげなく放置されていたのです。
『我が家の残りものですけど、家庭で使用するこ
とはもう無いので、失礼じゃ無かったらこのまま
置かせて下さいね?お酒を飲み過ぎたり、自信が
無い時にでも使って貰えたら…。 恵美子』
私は便箋に綴られた文面を読み終え、今日我が家
へ訪れるにあたり、彼女が錯綜させていた私に対
する想いと決意が突き刺さり、胸の中が抉られる
ような思いでした。
そして汚してしまったパイル生地の肌掛を洗濯機
に放り込むと、私は再び疼き始める自分の性を直
穿きしたラウンジパンツに模らせ、キッチンで作
り直したハイボールのグラスを片手に、まだ彼女
の残り香が遺るベッドに横たえながら、何時しか
深い眠りの淵に堕ちていました。
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