そして我が家へ上がるなり、勝手知ったる様子を見せ
る彼女が『お鍋お借りしますね』とキッチンに立つと、
持ち寄ったお手製の料理を保冷バッグから取り出し、
手慣れた手付きで温め直していたのです。
『私、昨日は6時間も長居して、祝日なのに関根さん
を疲れさせたんじゃないかと思ってて…』
リビングのローテーブルにグラスを並べ、氷を入れた
アイスペールにマドラーをセットする私に、キッチン
から横顔を覗かせる彼女が、話しかけていました。
『全然疲れてなんか無いですよ?DVDにしても初め
から小山さんに差しあげていれば良かったものを、私
の方こそ気が利かなくて…』
『私こそ無理に観させて貰って、あっ!その保冷バッ
グのサイドポケットにお返しのDVDを入れて来たの
で、良ければお時間のある時にでも…』
『お返しなんていいのに,,,,』と私がサイドポケット
のDVDを手にして見ると『白蛇抄』と言うタイトル
と共に瀬戸の花嫁で有名な国民的歌姫の画像が掲載さ
れ、裏返したケースには38年前に東映から配給され、
水上勉原作の文芸小説を忠実に映画化した作品と記さ
れ、翌年の日本アカデミー賞では主演の小〇ル〇子が
最優秀主演女優賞受賞と記されていました。
『このDVDは小山さんが買われたんですか?』
と私は冷蔵庫に納めたカマンベールチーズとサラミを
取り出そうと、歩み寄ったキッチンで何気なく尋ねて
みたのです。
すると、閉店セール中のレンタルビデオショップへ彼
女のご主人が出向いた際、店頭でワゴンに山積された
中から見つけだし、彼女が持つ愛読書と同じタイトル
な事と、500円の破格値だった事から購入されたら
しく、現在はDVDプレイヤー自体も壊れた事と、一
人息子への影響も考え、数あるDVD化された文芸小
説のディスクと合わせ、処分するつもりでいたと言う
のです。
『うん、ばっちり!』と丁寧に味見を終えた彼女は鍋
から盛り付けた鰤の照り焼きと高野豆腐の煮物をトレ
イに乗せると、リビングに向かって歩み寄っていまし
た。
にこやかな笑顔を携え、リビングのローテーブルにお
手製のアテを並べる彼女に視線を向けると、上半身を
屈めた胸元からレースが縁取る純白のブラを覗かせ、
程よい膨らみを見せる胸の谷間を、あからさまに露呈
させていたのです。
そして今日は私がホストとばかりに、気忙しくハイボ
ールを作る私に、これだけは自慢料理と言うだけあり、
お手製の鰤の照り焼きは絶妙な味付け加減で、副菜の
煮物に至っても、高野豆腐に椎茸と人参、そしてサヤ
インゲンが混菜し、素朴で優しい味付けがハイボール
の杯を進めていました。
点けっぱなしのTVからは新型コロナウイルス拡大の
ニュースが流れ、何度かの緊急事態宣言が繰り替えさ
れる中、私の赴任地に於いても8月下旬には対象地域
として追加されており、最終19となった都道府県の
全てが9月末まで延長される事となるのですが、皮肉
にも、そんな状況下が彼女が携わる宅配業界の業績を
伸ばしている事実に、悲喜交錯すると言う彼女。
『暗いニュースばかりで嫌になっちゃうね、一緒に観
ませんか?』と頂いたDVDを左手に掲げて見せる私
に、口角に笑みを浮かべる彼女は、静かに頷いていた
のです。
やがて再生される映像がハイライトシーンを迎えてい
たのですが『当時の彼女、まだ32歳だったんですよ』
と迫真の濡れ場を演じ始める主演女優を真っ直ぐに見
入り、譫言のように呟いてみせた彼女。
やがて肌蹴た襦袢の胸元に惜しげも無く乳房を曝し、
愛する男の名を咽ぶように連呼するのですが『凄い演
技力ですよね…。あっ!今日は私が洗いますね?』と
俄かにその場から立つ彼女は照れ隠しなのか、キッチ
ンへ向かうと、洗い物を始めたのです。
再生される映像は私の想像をはるかに超え、全裸にな
る事も厭わず、堂々と自ら乳房を揉みしだく熱演に度
肝を抜かされ、恥ずかしげも無く、疼き始めたシンボ
ルをラウンジパンツの下で自覚し始め、身の置き場の
無い想いにトイレに逃げようと、私がキッチンで背中
を向ける彼女の後ろを通り過ぎようとした時でした。
『私、この原作となった水上勉の文芸小説も読みまし
たけど、映像としての再現性はラマンより白蛇抄の方
が断然凄いですよね?』
背中越しに落ち着いた口調で話しかける彼女の背後に
立ち止まると、右脚を左脚の踵まで爪先立てる様に滑
らせ『こんな淫らに恋慕してしまえる恋って、ある意
味幸せですよね…。』と続けたのです。
『確かに歌唱力だけじゃなくて、女優としての才覚も
有ったんですね、余りにリアル過ぎる演技につい...』
私はとりとめのない返答を返し、急ぎ足でトイレのド
アを開け入ると、わざとらしくトイレの排水レバーを
回し、排水の音色と共に平常を取り戻そうとしていま
した。
時間にしておよそ5分前後。私がトイレから出るとキ
ッチンに立つ彼女の後ろ姿は既に無く、僅かな漲りを
残したまま再びリビングに戻れば、DVDを見入る彼
女の後ろ姿を捉え、そのソファの背もたれ近くまで歩
み寄って見れば、両脚を組んだ大腿に頬杖をつき、少
し前屈みになっている彼女の胸元に視線を落とすと、
透き通るような肌に青白い静脈が浮かび、その胸の谷
間を覗かせていたのです。
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