いくら酔っていたからと言え、知らなかったとは言え、どうやら手は出してないらしいとは言え。
俺は他人様の奥さんをラブホテルに連れ込み朝帰りをさせた。
俺はまた目眩を感じる。動悸が早くなって心臓が口から飛び出しそうだった。
カオリさん、すみません!奥さんだなんて知りませんでした。昨夜帰ってないし、朝帰りとか大丈夫なんですか?旦那さんに連絡しないと、俺なんかあったら、奥さんとは何も無かったと出るとこ出て証言しますっ!俺は慌てて最早、自分が何を口走っているのか分からなくなった。
カオリはそんな俺の姿を見て、また爆笑する。
暫くヒーヒーと声を上げて笑ったあと、ユウちゃん大丈夫。厳密には大丈夫じゃないか。と笑いながら続ける。
わたしね旦那と別居して長いの。今は離婚調停、真っ只中。だから厳密にはアウトかな。でも別に何も無かったんだし大丈夫でしょ?
凄い慌て様ね。真面目なんだなぁユウちゃんは。ウチの旦那はガンガン浮気しまくってバレても平気でシラを切るような男だったの。そのくせ自分の浮気が原因のくせに離婚したく無いってゴネてるの。ヘンな男でしょ?ちょっと世の中に対して体裁繕わなきゃならないような仕事の男だから離婚は困るらしいのね。そのくせ別居するなら、地元で噂になりたくないから他の土地に行けって言うのよ。どうも周りには母親が具合悪くて暫く実家に面倒見に帰ってる事になってるらしいの。馬鹿馬鹿しい。とカオリはかぶりを振った。
世の中な対して体裁を繕わなきゃならない仕事?何だろうか?議員?市会議員あたりだろうか?そう言われてみると、やってることも言ってることも破茶滅茶だがカオリはどこか雰囲気や着ている服に品がある。
カオリは、ねぇその玉子焼きとこの何だか分からないコレ取り替えない?と言って確かに何だか分からない炒めものの様なものが入った小鉢を突き出してくる。
俺は思わず笑って、何だか分からないモノと交換は嫌だなぁと答える。カオリは、もーらいっ!と言って俺の玉子焼きをひとつ摘んで口に放り込むと美味し。と笑った。
ねぇ。これからどうする?今日休みなんでしょ?デートしようよと何度見ても思わずドキッとしてしまう魅力的な笑顔をカオリは見せる。
人妻さんとデートして良いのかな?と俺は戸惑って口にするとカオリは笑いながら人妻に婚約指輪渡す男がなんでデートを躊躇するの?と笑いながら俺の顔を試すようないたずらな表情で覗き込む。
俺は笑って、そりゃそうですね。じゃあデートしましょ。と頷いて返した。
カオリはやったー!と箸を持った手を上げてはしゃいだ。その可愛らしい仕草に俺は心奪われた。
ねぇ。海見に行かない?お天気良いし。まだこの時期じゃ海岸だって人が出てないだろうし、電車に乗って海岸で海眺めてビールでも飲もうよ。
俺は朝起きた時の二日酔いなどカオリの笑顔に吹き飛ばされて潮風の中、こんな魅力的な女性と青空の下でビールを飲んで談笑するというプロポーズ失敗の翌日にはうってつけの申し出に心躍らせた。
よし。決まったら直ぐに行こう!俺は席を立ち上がるとカオリに手を差し伸べた。
カオリはにっこりと微笑むと俺の手を握り返す。俺たちは恋人同士の様に手を繋いで駅までの道を歩いた。
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