可奈からの返信は来月学生時代の仲良し6人組と毎年恒例の飲み会がコロナの影響で飲食店でやりづらい、可奈の自宅にケータリングや皆で持ち寄ったものを飲み食いして楽しもうと思っていたが、不味いケータリングを頼むならウチに頼めないかというものだった。
当時はコロナを甘く捉えていてケータリング事業やテイクアウトといったものにまだまだ消極的な時期だった。俺はこれを機会に会社にケータリングについて積極的になるべきだと提言しよう、そのテストケースと託けて可奈のホームパーティ依頼に応えてやろうと考えた。
俺は早速、テイクアウト、ケータリングについて資料を纏めた。あの時期にテイクアウトに出遅れた原因は会長だった。若い頃は何でも直ぐやれ、今やれの人だったが会長も歳をとって保守的になった。いっとき弁当屋展開に手を出して手痛い失敗をしていたのもあったのかもしれない。
会長は立ち上げたばかりの高級店がケータリングをする事がブランド化の流れに逆行すると懐疑的だったので店のイメージを壊さぬように料理人も食器も持ち込む付加価値をつけた高級志向のサービスをテストするとして渋々認めて貰った。
俺は翌日、可奈にメールを送りその旨を伝えた。
可奈はやはり思った通り裕福な暮らしをしていた、高級住宅街で連日、飲みに歩ける身分だ、学生時代の女友達と自宅でホームパーティ。
俺が料理人、スタッフや店の食器類を持ち込む大掛かりなケータリングを提案すると予算を心配していないお気楽な返信メールが届いた。
俺が最初にこの街に出店を決めたのは駅前の高級スーパーの惣菜売り場の目を疑うような高価な商品を見たからだ。その惣菜を値段も見ずに買い物籠にポンポン放り込む住人達。
それまで大衆店の商品開発でいかに安い食材を使ってどれだけ利益率を確保しながら安く提供出来るか、大の大人が大人数で1円、2円の話を議論していた俺には衝撃的な光景だった。
俺は思い切って言ってみた。可奈さんの考えてる内容のイメージやご自宅のテーブルやキッチンなどの環境を事前に確認したいので打ち合わせを兼ねてご自宅にお伺いしてよろしいでしょうか?
それまでメールをすると1時間以内には来ていた返信がこのメールを送信して2時間以上経って返信が無い。俺はやはり自宅に行くというのはやり過ぎだったか、何か変に思われたかもしれないと焦り始めた。返信が無いまま3時間経とうとした時に俺は失敗したと思い、パソコンに向かい何とか挽回する内容をメールしようと思案を始めると可奈から返信が来た。
用事があって出ていました。返信遅くなって申し訳ありません。明日の午後ならば空いてます。
可奈に直ぐに14時にお伺いしますと返信した。可奈からは承諾と住所を書いた返信メールが届いた。
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