里美さんとグッと距離が縮まったのは、里美さんの仕事上でのミスからでした。アクティビティだがどこかヌケている里美さんは、会社内では新しい企画を考案してすぐに行動に移す反面、発注数を間違えたり、特に数字を扱う仕事でミスが多いように思いました。
いつもはそんなミスを笑い飛ばせるような些細なものばかりでしたが、今回のミスは簡単に笑い飛ばせるようなものではありませんでした。今回も発注数の間違いでしたが、バラで仕入れる予定がケースで仕入れることになっていました。送られてきた請求書を見て驚いた社長が、慌てて仕入れ業者に連絡を取りましたが、受注生産なので返品は困ると言うことになりました。本来、バラ20個だけだったが、1ケース24個入りを20ケース仕入れたため、480個が納品されてしまいました。
社長は「里美さん、ミスは誰にでもあることだし、里美さん一人の責任ではないですからね。もしかすると、元々これだけ仕入れなさいって神様が思ってたのかもね。これが全部売れたら特別ボーナスですね。」と、すごくポジティブな言葉に里美さんは声をあげて泣いたのをそばで見ていました。
「トモくん、ちょっと…」
「はい、社長。何でしょうか?」
「社長室に来てくれませんか?」
「わかりました。」
社長室に呼ばれた僕は、社長の本音を聞きました。
「里美さんの落ち込んでいる様子を見たら、ああ言うしかなかったの。正直、里美さんの企画力には期待しているけど、初めての商品だから冒険はしたくなかったの。ねぇ、トモくん。あれを全て捌くのを手伝って欲しいの。それから、しばらくは里美さんと一緒に行動してサポートしてあげてね。里美さん…明るく振舞っているようだけど、先日離婚したばかりなの。ここで、仕事もミスをしたとなると、色んな意味で彼女は壊れてしまうかもしれないのよね。もし、全て捌くことが出来たら、あなたにも特別ボーナスを出すからね。」と言ったあと、社長は舌舐めずりをして僕の目を見つめてきました。
一瞬身震いをした僕は、頭を下げて社長室を出ました。
この日から、僕は里美さんとペアを組んで仕事をするようになりました。私生活でそんな辛いことがあったことなんて微塵も感じさせなかった里美さんでしたが、ペアを組んで一緒に仕事をするようになったことで、里美さんのことが色々と見えてきました。
「トモくん、今日は色々とありがとう。里美…ミスを見てどうしたらいいかわからなくてパニックになってたの。それを社長とトモくんが助けてくれたことが本当に嬉しくて。ねぇ、お礼させてぇ。今日空いてる?」
「そんな、お礼なんて。」
「お礼をしないと私が嫌なの。じゃあ行こっ。車出してね。」
といつもの里美さんに戻ったことで、僕は内心ホッとしましたが、これだけの個数を捌くにはどうしたらいいのかと心配していました。
普段食事といったら、ファーストフードがコンビニ弁当、せいぜいファミレスといった所で食事をしていた僕ですが、里美さんに指示されて向かった先は、里美さんの家でした。
「ここが私の家。いつもコンビニとかでご飯済ませちゃってるんじゃないかなって思って、私がトモくんに手料理をご馳走するね。出来るまでそこに座ってテレビでも見ててね。」
里美さんは別の部屋に入って私服に着替えてきました。いつもスーツ姿の里美さんの私服姿は思わずドキッとするほど可愛らしかった。僕はテレビを見るよりも、料理を作る里美さんが気になり、ずっと里美さんばかり見ていました。それに気づいた里美さんが「もぉ、こっちばっかり見ないでよ。照れちゃうじゃないですかぁ笑」と言いましたが、僕は里美さんに心奪われていました。
「はぁい、出来ましたぁ。家にあったあり合わせで使ったから、簡単料理だけどいっぱい食べてね。」と、ローテーブルに並べられた料理はどれも美味しそうでした。
部屋がそれほど広くなく、ローテーブルも大きくなかったので、自然と里美さんに触れる距離に里美さんは座ってきました。
食事をしながら里美さんは、色々と別れた旦那さんの愚痴を言っていました。仕事場では決して見ることがなかった里美さんの憂いの表情を見た僕は、思わず抱きしめてあげたいと思いましたが、我慢をしました。
ご飯を食べ終わった後、少し談笑して明日からどのようにするかを話しました。時間も遅くなってきましたので、そろそろ帰ることを里美さんに伝えると、少し寂しそうな表情で僕を眺めてきました。
それでも、僕はどうしたらいいのか分からず、里美さんの手を握って「大丈夫。僕も色々もアイデアを出すから、これを成長の機会と思って頑張りましょ。」というと、いつもの笑顔に戻りました。
里美さんの家を出て車に乗った僕でしたが、胸のドキドキがおさまることがありませんでした。家についてから里美さんのことを想像しながらオナニーをして寝ました。
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