アケミさん。年齢35歳。自己紹介された時に聞いたのは、いちおう既婚者。子供もいるそうです。そして自助グループにたどり着いた経緯は、自分では「キッチンドランカーの度が過ぎたバージョンっていうか。」と言っていました。簡潔にいうと、最初はアルコールを飲みながらキッチンに立って旦那と子供の食事や、明日の弁当などを作っていたら、気が付けばそれが習慣化してしまい。。。最終的には「酒がなければ食事の準備どころか、何もする気がおきないような状態になってしまった」と言ってました。アルコールを断って3か月が経過ているとも。
見た目は普通のキレイどころの奥さんという感じでした。服装も落ち着いた雰囲気のベージュのワンピース、髪の毛も今では普通の少し茶色く染めた感じ。かるくネイルに細工が施されているのが(女性っていつになってもオシャレが好きなんだな)なんて感じさせる、夕方のスーパーにでも行けば、普通に歩いてる感じの美人系奥さんでした。
僕はこのアケミさんが最も、このグループの中で年齢が近い存在であったという事もあり、僕とアケミさんは自然と仲良くなったんですよ、とだけでは非常に簡単すぎますが、ほんと自然に何でも話せる間柄になって行ったのです。
そして僕達が「逸脱」し始めたのは、僕が自助グループに参加して2か月くらい経った頃からです。基本的なスタンスでは、このグループは(どこのグループでも同じだと思いますが)プライベートな事には足を踏み入れないという鉄則というか、そういった空気が完全に浸透しています。
ですから、グループ内でもフルネームや相手の住居なんて知らないケースが殆どですし、会合が終われば各自さっさと家に帰る。・・・・ものだと思っていました。そんな中、相手の方から「この後、すぐ帰る?」とティータイムの時に他の参加者に聞こえないような声で質問されたときは、ちょっと僕も驚きました。
僕は(何か、この場では話せない相談でもあるんだろうか)と思い、「いえ、別にまっすぐ帰る予定もないですけど?」と言いました。するとアケミさんは「バス亭にでるところの道の一個裏にはいったとこのローソン知ってる?そこで落ち合おうよw」と言ってきたのです。
ただ明らかに、このグループの参加者には聞かれたくない、知られたくない僕と二人だけの密会であるのは間違いありませんでした。
僕はその日はグループの会合が終わると、「お疲れ様でしたー。 じゃ、また来週~」と一番先に部屋を出て、僕は早歩きで指定されたローソンまで向かっていきました。そしてローソンの中で立ち読みをしていると、「やっほ♪」という感じで雑誌コーナーの窓ガラスの向こうでアケミさんが僕に向かって手を振っているのが目に入ったのです。
僕はそれから店を出て、アケミさんとプラプラと歩いて行き、なんとなく見つけた公園の中に入っていったのです。(なんか話しでもあるんだろうか)と僕は思ってますので、「何かありました?w」と聞いてみると、「いろいろ話せそうな感じだから、ちょっとこういった時間作ってみようかなって思って♪」と答えてきたのです。
そして僕達がした会話内容といっても、ごくごく一般的な内容だったと思います。ほとんどアケミさんが話し訳で僕が聞き手。アケミさんのいわく「自助グループもいいんだけど、年齢的な問題でどうしても話し合わない部分もあるからさぁ~」と言ってたのが印象的でした。
僕もまったく同じことを考えており、「それはありますよねwww この人ら相手にどこまで話していいのか掴めない感wwww」こういった気ごころ知れたというか、そんな関係が構築されていったのが僕とアケミさんの仲だったのです。
そしてアケミさんのとのグループ会合終了後の密会は日常化していくのですが、よほど何かの予定がない限り、グループ会合が終われば例の公園でらに1時間~2時間くらい話し込むという習慣がついていました。話し込む内容といっても、人間2人が集まればやっぱり出てくるのは人の噂話。自助グループの参加者メンバーが、「実は・・・表向きはああ言ってるけど、本当は〇〇しているらしいよ」という情報をアケミさんが話し、僕はそれに「まじっすか・・w」と返事をする、これが基本スタンスでした。
ただ、このアケミさんとの密会は原点である断酒を継続するのにいい効果があったのか、それとも悪い効果があったのかといえば、それは両方あった。と答えほうが的確かもしれません。アケミさんとの密会のメリットは、「次回も自助グループの会合に参加しよう」というモチベーションに繋がるという部分。ですが、デメリットは「本来の目的から逸脱し、関係のない噂話に足を突っ込んでいる」というデメリットも存在していました。
そして、断酒という観点からすれば誠に残念な事に、僕達は二人そろって悪いほうにスリップしてしまったのです。
そう。僕達は飲んでしまったんです。
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