道すがらショートヘアのおばさんは自分が田端直子という名前であることの自己紹介から、元々は専業主婦だったのが旦那が独立して広告会社を1人で始めた際に会社の事務方を手伝い始め、今は経理のみならず営業はほぼ自分がしていること。
彼女が勧誘活動をしていた宗教はこの辺りが発祥の地で地元では有名な団体だったが、旦那の両親が熱心な信者で旦那自体は信心は浅かったものの独立したての仕事が無い頃に、心配した両親が信者繋がりの仕事を多数紹介して、今も信者繋がりの仕事が多く勧誘活動は不本意ながら会社の営業活動だと割り切っていて彼女自体は全く信心が無いという事などを話してくれた。
田端広告社は駅前の小さな雑居ビルの3階にあった。
中に通されると20坪程のワンフロアを使っていた。
直子さんが、ごめんなさいね。散らかっててと言いながら俺の背後でスイッチを入れる音がすると照明がつき無人の雑然としたオフィスが目の前に広がった。
そこ、狭いけど座って。目の前の年季の入った応接セットを指差す。俺はあちこち痛んでいる革製のソファに腰掛けた。
飲む?向かいあった反対側のソファに腰掛けた直子さんがソファの横の小さな冷蔵庫から缶ビールを取り出す。
あんな勧誘なんて、地元で知り合いには見られるし、当然そんなのに入ってるんだなんて離れていく人達も居るし、本当は嫌なのよ。だからいつも終わった後はここで1人で呑んで帰るの。貴方お酒は?直子さんは缶ビールとせんべいの袋を応接セットの小さなテーブルに並べながら尋ねてくる。
呑みますけど今はコロナですっかり呑む機会減りました。俺が答えると直子さんは、じゃあ久しぶりにオバサンに付き合ってよ。一本くらい大丈夫でしょと俺に缶ビールを差し出した。
俺は断れずに缶ビールを受け取った。自分の缶ビールを開けた直子さんが乾杯と言う。俺も缶ビールを開けて直子さんの缶に自分の缶を合わせた。
こんなものしか無いんだけどと言ってせんべいを手渡された。直子さんは聞き上手で俺は何故デザインをやりたいのか、やっと決まった就職先を1年で辞めた経緯、今のバイト先には昔から客として通っていて無職になって困っていた俺をオーナーが拾ってくれた話等をしていた。
直子さんは俺の話をニコニコとして聞き、時々若いなぁ。良いなぁ若くて。と返してきた。
俺は若くないですよ。もう二十代半ばで無職でこれからまた学校行って就職とか遅いですよ。と言うと
直子さんは全然大丈夫だよ。遅くないよ。私みたいな歳だとやり直しなんてもう効かないけど貴方ぐらいの歳ならまだまだと言う。
えーそんなやり直しが効かない歳って。直子さんまだまだ若いじゃないですかと俺が返すと直子さんは嬉しそうに笑い、もう嬉しい事言ってくれちゃって、私もう来年40歳だよ。最近歳とったなぁとしか思わないもんと言って足をさする仕草を見せた。
彼女は足腰を始め身体に40歳目前になるとガタが来ると言うつもりで見せた足をさする仕草だったのだろうが、その仕草は俺には違う意味を持たせた。
宗教の勧誘おばさんとしか見ていなかった時は地味な中年オバサンにしか見えなかったが、こうしてほろ酔いの彼女を見ると全然違って見えてくる。
直子さんは色白で肩までの前下がりのボブは黒髪が艶やかだ。背が小さい人だが、地味なグレーのスーツからのぞく白いブラウスに包まれた胸は豊かでむっちりと熟女の色香が匂いたつ様だ。
戯けてさすった柔らかい曲線を描く太ももにぴったりと貼り付くスカートからのぞく脚は魅力的に見え俺は急に彼女を強烈に女として意識し始めた。
もう一本飲んじゃお。やっぱり若い子と呑むのは楽しいなぁ。いつもしけたオジサンかこうるさいオバサンとしか呑んでないからね。
タケちゃんも、はい。と言ってオーナーにはタケちゃんと呼ばれている事を聞いた直子さんは俺をタケちゃんと呼んで、もう一本ビールを差し出してきた。
ワタシ本当はあまりお酒強くないんだぁ。直ぐに顔が真っ赤になっちゃって恥ずかしいんだよね。もう顔真っ赤でしょ?顔が熱いもん。冷たくて気持ちいい。直子さんは色白な肌を赤く染めて、柔らかそうな頬に缶ビールを押し当てて俺に言う。
俺は、ほろ酔い気味の熟女の色気にすっかり魅入られていた。
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