直子さんに手を引かれて、僕らは大きな老舗ホテルの通用門に来た。
大丈夫なんですか?僕が尋ねると直子さんは大丈夫のはずだよ。もう何年も前だけど入ったコトあるんだぁと答えて通用門の鉄の柵のかんぬきを外し始めた。
僕はドキドキして辺りを見渡した。本当に大丈夫ですか?直子さん。監視カメラとか付いてるんじゃないですか?と尋ねるが僕の言葉に耳を貸さず直子さんはかんぬきを外して鉄の柵を手前に引く。
ガガガガッと鉄柵が、けたたましい音を立てる。
少し開いた間から直子さんは中に入り、僕に早く早くと手招きをする。僕も門の中に入り直子さんと鉄柵を元に押し戻しカンヌキを掛けた。
直子さんは、カンヌキを掛けると僕に振り向きドキドキするねと言って少女のような眩しい笑顔を見せる。あまりにも魅力的な光景に僕は眩暈すら覚える
僕達は忍び足で廊下を渡って、大きなガラス扉を開けて夏の花々が咲き誇る中庭に出た。
噴水が柔らかい水の音を立てている。僕らは噴水の横の鉄製のベンチに腰掛けた。
ねえ。見て。星が見えるよ。都会のど真ん中。満天の星とはいかないけれど確かに星空だった。
夏の風が吹き抜ける。夜空を見上げる直子さんの美しい横顔に僕は見惚れてしまう。
僕は自然とベンチの縁に置かれている直子さんの手に僕の手を重ねた。直子さんはそのまま夜空を見上げている。
僕が直子さんの手を軽く引くと、直子さんはふわっと僕に身体を預けてきた。僕は直子さんにキスをした。
直子さんはキスをした僕に、あーキスした。こんな事していいのかなぁと言って笑う。
色白の肌が夜の暗がりで白く光っている。綺麗な輪郭に少し薄いピンクの唇。大きな瞳はいつも優しく笑っている。僕が銀色に光るピアスに触れると直子さんはキスをせがむように瞳を閉じた。
僕達は暫く夢中でキスをした。歳上のひとの唇は柔らかく、情熱的でも恥じらいがあって今までの歳の近い女の子達のものとは別格だった。
僕は直子さん、良かったらウチに来ませんか?と尋ねると直子さんは、僕を見つめて微笑むと良いよ。行こうと答えてくれた。
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