それから4ヶ月ほどしたある日、新天地の新しい職場に差出人の名前のない1通の手紙が届いた。
『俺さんへ
新しい職場はどうですか?元気ですか?
私は無事に男の子出産しました。
残念ながら双子じゃありませんでした。
もしこっちに来るときは必ず連絡して下さいね。
元気で頑張ってくださいね』
手紙の中にも名前がなく最大限の配慮の手紙だった。でも間違いなく恭子から手紙。
近く部署が変わって産後早々に仕事復帰するとのことだった。
それから2ヶ月ほど経ったころだったと思う。
出張で元の職場のある市に行くことになった。
思い切って恭子の職場に電話をかけた。
部署の性質上、恭子が電話に出る確率が高いのは知っていた。
もし恭子が出なければ、ガチャ切りしようと思っていた。
「はい○○社でございます」
恭子の声だ。でも間違っていたら困る。
「俺と申しますが、△△さんですか?」
と恭子の名前を確認した。
「えっ」
「俺だけどわかるよね」
「もちろんです。どうしたんですか?」
お互い声がうわずってるのがわかる。
自宅へは電話しにくいし、職場でもお互い声だけでもバレる可能性があるので頻繁に電話もできない。
手早く、次は何時ごろ電話すれば良いか確認、滞在予定について連絡して可能なら会うことが約束できた。
さて、出張当日。数日滞在なのだが、平日昼間に無理くり時間を空けた。レンタカーで移動。
郊外型ショッピングセンター駐車場で待ち合わせ。
なにせ、一児の母。まだ子供も乳飲み子である。
急に来れなくなることもある。
ドキドキして待っていると、彼女がやってきた。
助手席に乗り込んできた。
心なしか紅潮しているようだ。
少し痩せたようにも見える。
「来てくれてありがとう。」
恭子の手を握った。
「時間は大丈夫?」
「3時間くらいなら」
黙って発車して、すぐ近くのラブホへ入った。
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