何度チャイムを鳴らしても人が出てくる気配がなかったので、こそっと玄関扉をひねってみた。鍵が開いていた。本来なら不法侵入になるかと思ったのだが、チャイムを鳴らしても返事がなく扉が開いていたから心配して中に入ったと説明すれば大丈夫だろうと思った。
玄関には女物の靴が何足かあった。そのうちの一足は嫁の実家を出る時に見た靴と全く同じものだった。俺は確信した。ここにいるのは朋代の妹ではなく俺の嫁だということを…。だが、一つ疑問に思ったことがある。それは時間的にそれは不可能だということである。嫁とは一緒に神社に行ったこと。朋代が大木の下で待ってる前に家に戻って靴を確認したこと。
俺は物音を立てずに扉を締めて外に出た。嫁だと思い込んでいたが、そうではないかも知れない…時間的に無理がある。じゃあ、やっぱり朋代が言うように妹なのかも知れない…
俺は朋代の家から少し離れたところにあるコンビニへと向かった。ここの駐車場からは朋代の家の玄関が見えていた。俺は慣れないタバコとライターをコンビニで買うと、駐車場に設置されている灰皿の前に立ってタバコに火をつけた。生まれて初めてタバコを吸った。こんな不味いものをみんな吸っていたのか?咳は出るし頭が痛くなるし…だが、数本目に火をつけた時には身体が慣れたようでした。10本ほど吸った時に朋代の家から人が出てきた。女だ。
目を凝らして見たが、嫁の服装とは異なっていた。その女はこっちに向かって歩いてきた。おそらくこのコンビ二に入るのだろう。顔は朋代よりも少しキツイ顔をしていたが、その顔は嫁によく似ていた。しかも身長も嫁と同じぐらいであった。俺の目の前を通り過ぎた時、嫁にあまりに似ていると思った。だが、別人であることもわかった。
それならばなぜ嫁はラインも見ずに電話にも出ないのか…
俺は頭を悩ませながら朋代の待つホテルへと戻った。
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