さて仕事の方は契約が決まり、月一回ペースで岐阜へ出張することになった。
そのことを浩美に告げると、また飲みましょうと喜んでくれた。
そして月一回、岐阜で一緒に飲んで、ビジネスホテルの部屋へ帰るという状態がなんと一年近く続いた。
ある時浩美から提案があった。
「私の従業員達にあなたのお話を聴かせたいのよ。すごくためになるから。今度私のオフィスに夜来てもらえないかしら?」
「え、ええ構いませんが、夜で良いのですか?」
「貴方は昼間仕事だし、夜に集めておくから絶是非来てちょうだい」
浩美のオフィスは駅からは随分離れていて車で送迎してもらうことになった。
仕事を終えた俺は駅に車で迎えに来てもらい、浩美の運転でオフィスへと向かう。
オフィスに着くと驚いた。オフィスビルかと思いきや、この辺りでは珍しい高級賃貸マンションだった。
「浩美さんはここに住んでるの?」
「いや、ここは事務所だけど、マンションだから飲んだり食べたり宴会もできるようにしてるわよ。酔っちゃったらこのまま泊まることも多いかな」
「そうなんだ」
そしてその夜は浩美の従業員数人と交えてコーヒーを飲みながら懇親会。そして私が帰る旨を告げると、
「あら、せっかくおつまみとビールをご用意したので、飲んでかない?」
「え、いや、僕はそろそろ…」
「そんなこと言わずにねえ、みんな?」
皆が僕と飲みたいとのことで、僕はおばさん達と飲むことになった。
まぁこの日は他愛もない話で夜も遅くなったので、泊めてもらうことになった。
従業員と浩美は近くの自宅へと帰り、俺は一人でマンションの寝室で眠らせてもらった。
翌朝眼が覚めると、浩美がマンションに来て朝食を作っている。
「浩美さん、ありがとうございます。お構いなく、厚かましく泊まらせてもらってすみません」
「いいのよ、それよりこれから岐阜に来た時はここに泊まってちょうだい。宿泊費も浮くしいいでしょ?」
「あえ、あ、まぁ…」
「でも条件付き、ここに来たら昨日のようないいお話を聴かせたいので、またお願いね」
私は二つ返事でオッケーし、翌月からはホテルを予約せずにここに訪れて、泊めてもらうようになった。
もちろん毎回浩美は家に帰るし、ゆっくりと寝られるのでホテルより快適だった。
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