瞳「旦那は家のことは何も手伝わないし、姑は旦那が居ない間に来て、細々言うし。こんな状況にいたら誰でも病むよ…」
俺は何も言葉を返せず、ただ相槌を打っていることしか出来なかった。
瞳「ごめん…ゆうくんにこんな話ししても何も変わらないの分かってる…けど、女の人は話したがりなの。だからもう少しだけ付き合って?」
ひっついていた体を話し俺を見上げるように上目づかいで問いかける。
俺は断る理由もなく、二つ返事で瞳の問いに返した。
瞳「良かったら、ウチ、クル??」
俺「えっ?瞳の家?」
瞳の言葉はどこかで聞いた事のあるフレーズだったが、そこはスルーした。
瞳「うん…ゆうくんが良ければ、だけど。」
俺「ま、まぁ、い、いいよ…」
俺はかつてないほど緊張していた。人妻の家に足を踏み入れるなんて、そんな人の道から外れた好意をしていいものかと。
瞳「やった!まだ、お義母さんが来るかもしれない時間帯だから、もう少し時間潰さなきゃ」
そういう事もあり、俺は部屋の中の電話から時間ギリギリでフロントへ電話し、延長の旨を告げた。
そこから2、3時間はカラオケにいただろうか。
外に出ると空は薄暗くなり、街灯が灯っていた。
子供も起き、ベビーカーの中できゃっきゃっと騒いでいる。側から見たら夫婦に見えるのだろうか?と下らない事を考えながら、瞳に誘導されるよう、駅までの道のりを歩いていた。
瞳「ほんっと、ゆうくんて優しいよね!なんでも聞いてくれるし、話しててすごく落ち着くし!」
俺「そう?まぁ、瞳がそう思ってくれるなら、それはそれで嬉しいけど。」
瞳「ただゆうくんの嫌いな所もあるよ?そういうスカしたところ!」
別にスカしてる訳でも何でもない。単に経験が薄く、どう対処して良いかわからないことが多いので、クールっぽくなっているだけなのだが…そんな事言えるはずもなく。
俺「…そう?スカしてるかな?」
瞳「それ、その反応!そんな反応ばっかりしてると女の子にモテないぞ?」
たしかに瞳の言う通り!と思いつつも、グッと言葉を堪え、瞳の話しに相槌をうつ。
瞳は俺を小馬鹿にするようにケラケラと笑いながら、ベビーカーを押し、ゆっくりと歩みを進める。
※元投稿はこちら >>