・読者の皆様、ここから『最終章』へと入ります。
『疑似体験』、それは昨夜、僕が由希子さんにお願いをしていたこと。もちろん、すぐにはオッケーは頂けず、『一回だけ。』とのことで実現をしました。
その日、夜の8時に家を出た僕は、浜野クリーニングへと向かいます。開けられた扉からは、由希子さんが現れます。
『おかえりなさい。…でいいのよねぇ?』、馴れない言葉に彼女は戸惑い、『おかえりでいいの!』と言うと、改めて『おかえり~。』と言ってくれるのです。
暗いお店を抜け、居間へと移ります。そこには、由希子さんの手料理が用意されていて、僕はテーブルにつくのです。
隣に座った彼女が箸を渡して来ますが、『由希子?チュウは?』と言ってみます。『旦那でもしないわ。』と呆れながらも、キスをしてくれる彼女。
キスが終わると、『はい、あなた。』と箸を渡され、『あぁ~、めんどくさぁ~。』と愚痴が溢れるのです。
僕がお願いをしたこと。それは、由希子さんとの夫婦生活。それを仮想でやりたいと言ったのです。『由希子。』と名前を呼ぶのも、これが初めてでした。
ご飯を食べ始めますが、ギクシャクとしたのは隠しきれず、仕方なく『由希子?愛してるよ。』と言ってみます。
彼女も『はいはい。』とは言ってくれますが、同時に『もう、ほんとめんどくさいわぁ~。』と本音も言ってくるのです。
食事も終わり、今度はお風呂です。二人でお風呂に向かう途中で、彼女が一度旦那さんのいる部屋を覗きました。もちろん、僕には見せてはくれません。
そして、ドアが閉まる瞬間、『すいません、由希子さんと一緒にお風呂入ります~。』と言ってみると、『バカなこと言わんの!』と叱られてしまうのです。
この後はお風呂、そして2階では偽装『夫婦の営み』が行われる訳ですが、このどちらででも、僕は初めて由希子さんの涙を目にすることになります。
特に夫婦の営み中に流した涙は、とても印象的なものでした。
その気でなかった彼女が、『あなたぁ~!』と口にしてしまったことで、内に閉まっていたいろんな思いが溢れてしまったのだと思います。
続く。
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