『お腹空いたでしょ~?』、買い物に出掛けていた由希子さんが戻って来たのは、やはり1時間近く経ってからでした。混んでいたようです。
お店で横になっていた僕にマックの袋を渡し、彼女は奥へと消えます。きっと、旦那さんのお世話なのです。
彼女自身が昼食にありつけたのは、1時近くにもなっていました。そして、ようやく主婦の日曜日の朝が終るのです。
『相手してあげられなくてごめんねぇ~?いらないかぁ~?』と、主婦業を終えた由希子さんが僕のいるお店に姿を現します。
『相手いるよぉ~。暇やったんよ~。』と待ちくたびれた子供のように、わざとそう言ってあげます。
カウンターの向こうにいた由希子さんは、『そやそや。相手にしてあげなかった私が悪いよねぇ~?』と、いつものいいノリをみせます。
そしてすぐに立ち上がると、カウンターから僕の方へと歩み寄ってくるのです。
並べたイスに寝転がっている僕の前に、由希子さんが立ちました。そして、僕と目線を合わせるようにしゃがみこみ、『なに読んでるの?』と聞いて来ます。
僕の手にあったのは、もう完全に読み終えていた女性週刊誌です。彼女は他の雑誌を手に取り、眺め始めます。それは、大人向けの週刊誌でした。
『遠慮しないで、こんなの読みなさいよ~。』と言われ、僕の目の前で雑誌が広げられます。それはヘアヌード写真が掲載されているページでした。
悪ふざけたように、彼女が僕に見せるのです。しかし、『浜野さんなぁ~、僕が好きなのは浜野さんって言ったやろ~?』と同じノリで言ってあげるのです。
すると、『私のどこ好き?チュウとかしたい?』と言われ、その目が僕をからかっています。
『キスして…。』、真顔の僕に由希子さんの顔付きが変わります。レストランと同じで、彼女の中でまた葛藤が始まっているようです。
『キスさせて…。ほんと、浜野のことが好きだから…。』と告げると、やっと上から由希子さんの顔が降りて来るのでした。
厚化粧で年齢まで隠された顔。しかし、下を向いた58歳の顔は、怖いくらいに頬を垂らしました。厚化粧では隠せない『58歳のおばさんの顔』をしています。
厚くルージュの塗られた唇が僕と重なると、僕の手は身長のある彼女の身体を抱き締めてしまうのです。やっとです。
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