罠
彼女はその仕事ぶりから見てもそうだが、優しく立派な人格者そのものだった。すぐに多くの同僚から慕われ信頼を勝ち得ていた。「これは落とし甲斐があるな」私はそう思った。
人格者の彼女が、果たして私の腕の中で快感に身を任せたら、どこまで蕩けていくのか、その姿を見てみたい。いや絶対に私のものにしてどこまでも落しきってやろう、そう思い私は行動を開始していた。こんなイイ女が目の前にいるのに、指を咥えてみているだけなんてそれは馬鹿のやることだ。そう思った。
私は必至の調査で彼女の弱みを握った。
「冴子さん、大切な話がある」
穏やかに話掛けると、彼女は一瞬戸惑いの表情を見せたが、すぐに何時も私にむける軽蔑の眼差しを取り戻すと冷たく言った。
「何ですか?」
いいね、この強気。そう思いながら、私はニコニコと微笑みながら言った。
「ここで? いやとてもとても」
私がこの言葉を発した瞬間、頭のいい冴子は私が言わんとしたことを理解したようだった。「ここじゃ無理だから帰りに別の場所でお酒でも飲みながら、と言う訳ですか?」
「仰る通りで」
冴子は嫌悪感を露骨にして言い放った。
「最低ですね」
私への軽蔑の眼差しをスッと逸らすと冴子はこう言った。
「分かりました。ここで話が出来ない、と言うならそうしましょう」
話だけ聞いたらさっさと帰りますよ。そう言わんばかりの実に冷たい反応を。だが、心の内ではやはり不安だったのだろう。私への嫌悪感を露骨にしながらも誘いには応じてくれた。
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