5年前の話である。
一人息子は東京の大学に行き二人暮らし。レスだったせいもあり、妻に浮気されていた。
まあ妻に関心なくなった男の末路である。
疑惑を確かめるために妻を尾行。駅で車に乗る妻を見て確信。
問い詰めるとあっさり吐いたが、居直られ「どうしましょう」と言ってくる始末。
とりあえず離婚せず、相手の男から金を貰う事にした。
相場はこんくらいと言うと妻がお金をもらってきた。妻が工面したかも知れない。
両親から生前贈与で既にいくばくかのお金はもらってるかもしれない。
マイホーム検討の折、援助はあると言ってたからだ。
もうこれ以上は請求はないという念書も書いた。
「別れなくていい。今までどおり。だが俺が離婚すると言ったらその時は別れてくれ。」と妻に言った。
嫌味で新しい男ができたらまたもらうよとだけ言った。
貰った金は時々「処理」に使った。後腐れないお金で出来る性処理。
いや、しかし勿体無いと思うようになった。
もう昔のような元気はない。ほんとたまに1,2ヶ月に一度でいいのだ。
妻は週末にいなくなった。泊相手の都合なのだろう。
暗黙のうちに何も言わない、聞かないというかんじだった。
装って出て行く妻は綺麗に見えた。
別れようと思い立ち、息子への事の次第は妻に言わせることにした。
もとより妻にべったりの息子なのだ。
俺に逆ギレされても困る。
妻は平然としていた。もとより俺の悪口をきかせていたのだろう。
ところが、息子から電話が来た。「俺も悪いが、離婚の原因はあれの浮気」とだけ伝えた。
ほんとにダメなのかといろいろ聞きたがったが、あれがその気なんだから仕方ないだろうと言った。
「いや母さんが、ごめんなさいって泣いてる。」頭の中は???である。
妻は息子を介して俺に翻意を求めていたのだ。
息子が妻を連れ戻ってきた。
「男とは切れたと言ってる。今度だけは許してやってくれ。お願いだ。」妻はうつむいている。
「ちょっと二人だけで話そう。」と個室の居酒屋へ。
「お前ってしっかりしてんだな。」「何言ってんだよ。そんな場合じゃないだろ?」と怒られた。
気持ちをきかれ、「んー。どうでもいいんだ。多分、、。」
「他人事みたいに言うなよ。」
「いや、本当にそうなんだ。仕事も面白くない。趣味もない。まあ死んでるっていうかそんな感じだな。」
「欝かよ?」「そうか、欝かなあ。そうかもなあ、、、」
「やり直せよ。なんか二人でやればいい。」「うーん、、、」
温泉巡りを始めた。妻は温泉好きだ。俺は風呂入って呑んで寝るのが好きだ。
いい景色を見れば気持ちもいい。
セックスもたまにする。凄く反応がいい。俺の知ってる妻じゃなくてどっかの女としてる気分だった。
だが俺は変わってない。醒めたままだと思う。
だが妻はすっかりヨリを戻した気分だ。
「あの時まだ男と続いてた。男にほいほいされて心地よかった。息子の剣幕にウソを言った。息子に縁を切られたら生きていけないと思った。今は別れて良かったと思ってる。そしてやはり妻はあの金は自分のものだった。でも色々買ってもらったし全部損じゃない。」
みたいな感じで妻は独白した。
「まあ息子のためとは言えそれでいいならいいじゃないか。」と妻に言った。
子は鎹とはよく言ったものだ。
おれもやや悟りを得た気分になっってる。