その頃の私は30代の半ば、製造業の会社では管理職に就き、業績も仕事も順調でした。
工場で働くパートさんの中に、気になる中年女性がいました。とりわけ美人ではないのですが、肌の色が白く、ポッチャリした身体に色気がありました。
工場を巡回する度に彼女の職場へ立ち寄り、遠くから眺めていました。
何とか話しをする方法がないものかと思っていたところ、以外に早くその機会がやってきました。
工場の慰安会が温泉一泊二日の日程で開催され、くじ引きで決める宴会の席次で、彼女の席が私の左側になったのです。
二人とも最初はぎこちなかった会話が、お酒が回るにつれてなめらかになって、貴女のことが前々から気になっていました、と打ち明けました。
彼女は驚いて、私のようなおばさんを何故?と問い返しましたが、それ以上は話しが進まないままに、彼女の方からは家庭内の悩みごとを打ち明けられました。
年齢の離れた夫は定年間近で糖尿病を病んでいること、姑さんは脳梗塞で手術後身体に機能障害があること、男女二人の子供達は成人して家を出てしまっていること、などです。
夫とはもう5年以上も夜の生活はなくなっていることまで、笑って話してくれました。
宴会がお開きになったので、「もう少し話しませんか」とホテルロビーから裏に広がる庭園へ出ました。庭園の向こうはゴルフコースで、そのさらに先は湖でした。
松林の間に点在するベンチの一つに腰を下ろしました。
色白のポッチャリした身体が、ひたっと私に寄り掛かってきます。
もう生理もあがりかけていて、何年のの間「女の悦び」から遠ざかっているので、自分の意志に反して身体が男を求めているのでは、と身勝手に想像しました。
「ミユキさん(彼女の名前)、わたしとつきあってくれませんか?」と単刀直入に言いますと、一瞬驚いたようですが、
「こんな私のどこがいいのですか。人目もあることですし、職場で知られたらどうするんですか?」と顔を伏せます。が、私を嫌っているようではなさそうです。
庭園を散歩するカップルやグループが近くを通りますから、これ以上のことはできませんが、そっと肩を引き寄せて「明日、私の車で帰りましょう」と約束してそれぞれの部屋へ戻りました。