夕暮れの駐車場。車内で彼の腕の中、彼の指先が私の耳を撫でる。彼からプレ
ゼントのピアスが光っている。唇に触れる指先。彼からのルージュグロス。
「いい香りがするよ」彼からの香水。指先で撫でる髪。彼の好みの髪型。私は
彼のものかな、彼の彼女として、一人の女として、こうして見詰め合ってい
る。母親でなく、妻でもなく・・・
「指切りだよ」彼と交わした約束。来週のデート。彼から強引に約束させられ
たこと・・・
その日、朝、大学1年生の息子が同好会先輩の送別会で送り出した後、42歳
の私は急いでシャワーを浴び、髪を梳き、お化粧を整え、彼好みの洋服に着替
え、最後にルージュを引いた。玄関で黒のハイソックスにブーツを履いた瞬
間、私は彼の女に変身していた。駅まで歩く歩道、寒い空気が膝上のフレアタ
ックスカートの裾から除露出している白い腿と膝に冷たかったけれど、彼が喜
んでくれるなら・・・
5つ目の駅で降りると、彼の車に乗り込んだ。「おはよう」お互いに微笑ん
だ。昨夜からドキドキした気持ちが、さらに高まった。私は緊張してしまうタ
イプかしら・・・
郊外のショッピングモールへ向かった。平日の屋上の駐車場はがらんとしてい
た。彼が、そっと私の頬にキスしてくれた。私は、俯いてしまった。
私は短大を卒業してすぐに、今の10歳上の主人と結婚した。そして妊娠し
た。でも、流産した。その子が今生きていたなら・・・彼と同じ年。
そんな彼に、今夢中で恋している私。少女の様な、新鮮な気持ちで彼と向かい
合っている。彼も、私を女性として好きだと言ってくれている。一人暮らしの
青年に、生活用品等、お買い物を付き合ってあげてきた。それから半年。で
も・・まだ、最後の一線だけは守っていた。守っていたと言うより、勇気がな
かった。覚悟できない私がいた。でも、彼はそんな私の気持ちを受け入れてく
れ、女として大切に優しく扱ってくれている。「その時まで待ってる
よ・・・」そう言ってくれた。最後の一線の手前までは彼と経験した。ホテル
のベッドで、彼の部屋のベッドで、裸のまま抱き合って過ごした。彼の口で全
身を愛され、私の部分も入念に時間を掛けて愛してくれる。何度も真っ白にな
った。彼も、私の口に何度も放出してくれる。愛おしい温もりを喉の奥に流し
込む。主人にだってできなかった。彼だからこそ、飲んであげられる。
「美紀、ありがとう」彼の優しい声。私達は、お互いに偽名で呼び合ってい
る。お互いに好きな名前を選んだ。私は美紀。彼の名前は、流産した時、男の
子なら付けたかった名前の康介。
彼が、私の左手薬指を取り、いつもの様に、器用にリングを抜いてくれます。
これで、完璧にこれからの時間は彼の女としての時間が始まります。そして、
私の携帯電話を取り上げ、車のダッシュボードにしまい込みます。
駐車場に車を止め、「行こうか」と彼の優しい声。でもダメ。緊張しすぎてい
る私。「康介、ドキドキしてるの分かる?」「顔に書いてあるよ」私は、両手
で顔を隠した。「1本吸わせて」と、私はバッグからメンソールのタバコを取
り出し、火をつけた。彼に教わったタバコ。今では、美味しく感じている。
白い腿と膝頭がのぞくスカートの裾に、彼の指先が・・・「今日は、何色?」
「教えない・・・内緒」指先が裾から伸びる。その指先を押さえる私。「ひ・
み・つ」「だって、知りたいし・・」「レディに向かって、聞くもんじゃない
わ」「意地悪だなあ~」「どっちが意地悪よ、もう」まだドキドキしている
私。煙を吐きながら、「本当に行くんだよね」と私。「勿論だよ」
タバコを消し、気持ちを整えた・・様に表面だけ見えるだけ
車を降り、彼の腕に腕を回し、エスカレーターで2階へ降りた。「何色?」彼
が耳元で囁く。「もう、ひ・み・つ・・・」エスカレーターを降り、2階のフ
ロアを歩く。専門店街。「あった!」彼の声と同時に、足早になった。ブーツ
で早歩き、私を導き、彼はランジェリーショップに入った。女子店員と目が合
った。私達は、ブラとパンティを選んだ。彼の好みに従って、ブラのサイズを
確かめた。「今日のと同じ色じゃないよね」「ええ・・そうね」彼は私を導
き、レジへ。若い店員の前で、「彼女へのプレゼントにして下さい」と彼。
「プレゼントの包みですね」と女子店員。私は俯いていた。恥ずかしかった。
ドキドキした。早く、お店を出たかった。丁寧に包装してくれた。息子の様な
年齢の男性に下着をプレゼントしてもらった。嬉しかった。恥ずかしかった。
店を出て、彼の腕を取った。「もう・・恥ずかしかった・・・」彼は、笑って
いた。広いフロアを歩き、「美紀・・・来週あたり、あれだよね」と彼。
「え?」「あれの日だよね」よく覚えている彼。そう、来週には女性の日。彼
とエスカレーターで1階に降りた。生活用品売り場に回り、「いつも使ってる
やつ、選んで」と彼。生理用品コーナーで、私は選ばされた。いつものタンポ
ン。彼は歯ブラシ1本。レジで、彼が支払った。恥ずかしかった。店員も、正
面を見なかった。
コーヒーを飲んで、一番奥の席で休憩した。二つの包みは、彼が持ってくれ
た。彼が、袋を開け、テーブルにタンポンの袋を1つ取り出した。「ちょっ
と、康介、こんなところで・・・」彼は、どう挿入するのか教えて欲しいと小
さな声で言った。回りの気配を気にしながら、私は説明した。「・・・こうし
て、ぐっと置くに押し出して・・・」彼は、感心していた。
店を出て、エスカレーターで駐車場に向かった。暫く、寒い中、街の景色を眺
めた。私の背後で、耳元に、「寒くない?ごめんね」と彼。私は首を振った。
膝上のスカートの素足の私に、彼は優しく言ってくれた。嬉しかった。こんな
寒さなんて・・・
彼の手が、私のコートの下、スカートの腰周りから、お尻を撫でて来た。「や
だ~」甘えた声の私。その手は、下腹部へ回り、パンティラインをなぞってい
る。「誰か来ちゃうわ・・・」「大丈夫だよ」指先は、確実に私のパンティラ
インをなぞって往復します。「立ってられなくなったら、どうするのよ」「ふ
ふふ」彼は意地悪。「美紀・・」「なあに?」「お願いがあるんだ」「え?」
「あとで、さっき買ったパンティ、美紀に履かせてあげたいんだ」「嫌だ、恥
ずかしいわよ」「何度も脱がしてじゃん」「それとこれは・・・」「このパン
ティ、脱がせてあげるね。新しいの履こうよ」「どこで?」「内緒」「康介
は、意地悪。すごく意地悪」私は、彼を睨みました。彼は笑っている。そんな
彼に私は素敵な人と感じてしまう・・
「出る前にお手洗い、行きたいわ」「俺も」私達は、再びエスカレーターで2
階へ降りました。さっきのランジェリーショップの前は避けて歩きました。奥
の隅にあるお手洗いへ向かい、彼の腕を解きました。女子トイレに入る手前
で、彼は私の手を引き、隣りの障害者用トイレに導きました。鍵を閉め、私と
向かい合う彼。「ここなら、大丈夫」「ここで?」「おしっこしたいんでし
ょ」「康介がいるじゃない」「誰も来ないか、見ててあげるし」「そん
な・・・」彼は、私の髪を撫で、抱き寄せます。見つめ合い、私の額にそっと
キスします。「ね・・・」私は彼にコートを脱がされ、抱き寄せられ、熱いキ
ス。グロスが落ちてしまうほど・・・彼の手がスカートに・・・腿を這い上が
る・・・パンティ越しに撫でます。「だめ・・立ってられない・・」「しっか
りつかまって」「こ、声が出ちゃう・・・」彼はそんな私をよそに、パンティ
に滑り込ませ、指先が・・・私は脚を閉じ、彼につかまって・・・指が・・・
敏感な部分を・・・「だ、だめ・・・うう、ああ」指が・・・そっと挿入され
ていく・・・私は全身の力が抜けていきます。必死に彼にしがみついて・・
「濡れてるよ・・」「あん・・もう・・・だめ」
彼は私の背後に回り、スカートの中へ手が・・・「降ろすからね・・」彼の指
先で、私の薄いピンク模様のパンティはゆっくり、優しく、腿から膝へ、小さ
くなって降ろされて行く。ブーツから抜き取られたパンティを彼はポケットに
しまい、「さあ、おしっこできるよ・・」彼は私を抱えて、様式便座へ座らせ
ました。「康介、ホントに見てるの?」「ほかに誰もいないじゃん」私は、暫
くじっと俯いていましたが、やがてゆっくりとおしっこをしてしまいました。
水を流すことも彼に制止され、おしっこの音がいやらしく二人の耳に入りま
す。彼はペーパーで私の部分を優しくふき取ってくれました。こんなこと初め
てだし、好きな人の前でも恥ずかしくて、両手で顔を隠しました。
彼はもぞもぞ袋から、タンポンを取り出したのです。「これ、付けさせて」
「嫌よ・・」「どんなものか、美紀、知りたいんだ」私は根負けして、脚を広
げ、彼の手で教えた通り、タンポンを私の膣内に挿入してくれました。
ドアをノックされました。でも二人、その時には落ち着いていました。声が遠
くなり、立ち上がり、彼はまた袋から包装されたパンティを取り出し、「履か
せてあげる」と、私を背中向けました。ブーツの足元から、新しい薄いブルー
のパンティを優しく履かせてくれました。
外の人気無いのを確認して、二人、障害者用トイレから出ました。何事も無か
った様に、腕を組んで、エスカレーターから屋上駐車場へ。
車に戻り、はっと気づきました。「康介、私の下着は?」彼は微笑んでいま
す。「洗って返してあげる」「だめえ~」私は、康介の腕を叩き、必死に返し
て欲しいと求めました。彼は、受け入れてくれません。
本当に、意地悪な人。でも、今の私にはいなくてはいけない人。大好きな人。
大学生の息子と主人がいるのに、私は母でなく、妻でなく、私を女として愛し
てくれている人。きっと、私が彼に最後の一線を許して、彼の腕の中で抱か
れ、熱いものを体内で受け止めるのに、時間は掛からないだろうと・・・
私のこの恋は、前進しています。進行形です。その夜、彼からのメール。「美
紀、ありがとう・・・可愛かったよ」その言葉だけで、癒されています。