30代の当時、夫に全く関心を持たれなくなった私はこのまま女を卒業し、家政
婦になるのだと思っていました。
ただ、そんな話を誰かに聞いてほしくて(女性限定で)とメール仲間を募集した
所に返事を送ってきたのが彼でした。最初は男性は断るつもりでしたが、彼の
生い立ちや家庭の話を聞いていくうちに優しく繊細な人間性に惹かれて、メー
ルのやり取りが始まりました。不倫するつもりはなかったし、彼がいくつも年
下だったので会う気はありませんでした。
ところが1年近く経ったある日、彼が仕事で私の住む隣町に来る機会があり、
会いたいと言われて迷った末に会いました。初めて会ったとは思えないほど打
ち解けて私たちは何時間も話しました。その後も会えば彼は私の話を一生懸命
聞いてくれました。
そうして私たちは自然に…本当に自然に近くなっていき、お互いを必要とする
ようになりました。
彼はいつも一生懸命で、私をたくさん愛してくれました。もし二人とも簡単に
家庭を捨てられたならどんなにか楽だったでしょう。
純愛でした。本当に好きで、好きで、離れたくなかった。でも今はまだ無理。
まず子供を一人前に育て上げることと、二人が一緒になってもちゃんと生活で
きるように仕事面を安定させること等々、彼はいろいろ考えていたようです。
月日は流れ、会うようになってから5年経ちました。
お互いを好きな気持ちに変わりはありませんでしたが、更年期の入り口に差し
掛かってきた私は、夫に嘘をつき、車をとばして遠く離れた彼に会いに行くこ
とに少し疲れ始めていました。年下の彼にあまり負担をかけたくなくてお弁当
を作って持って行ったり、デート代を少し多めに出したりと、気を遣うのです
が空回りしていたようにも思います。
そんな複雑な気持ちが裏目に出たのか、ある日私の心無い言葉が彼の心を傷付
けてしまい「少し距離を置きたい」と言われました。どんなに謝っても、会っ
て話そうと言っても受け入れてはもらえませんでした。
後悔と反省は膨らむ一方でしたが、時間が経つにつれてわかってきたことがあ
ります。
私たちは頑張り過ぎていたのです。
お互いを良く見たい、良く見せたいがために悪い所を見て見ぬふりをしていた
のです。この関係が崩れるのが怖くて、不満があっても言葉にはせず、心の中
にため込んできたのです。だから、一旦溢れた私への不満は止めることが出来
ず、彼はもう私を受け入れられなくなったのだと思います。
心根の優しい彼は、またメールだけは送ってきていいよと言ったけれど、先の
ある若い彼をそれで繋ぎとめておくのはなんだか悪い気がして、きっぱり別れ
ましょうと私から言いました。
本当はまだ好きです。会いたくてたまらない時があります。
でももう女は卒業して、仕事と家のことをきちんとこなす45歳のオバサンでい
ようと決めました。
彼にはもう二度と会えないけれど、一緒に過ごした5年間の思い出は死ぬまで
私の心の支えとなるでしょう。心からありがとうと言いたい。
ずっと苦労してきて、それでも真っ直ぐに生きてきたあなた、どうか幸せにな
ってください。