次の週末、彼のところには行きませんでした。心の整理がつかなかった
からです。職場でも、仕事のこと以外話すことは無くなり、私は意識
的に、彼と二人だけになることを避けていたのです。
そんな日が続いたときでした。彼が無断欠勤をしたのです。初めて
のことでした。アパートには電話が無いので、主人がちょっと
様子を見てきてほしいというので、気が向かないけど、しかたありま
せんでした。彼はアパートにいました。最初ノックしても出ないので
帰ろうとするときにドアが開いたのです。玄関先で話を聞くと、
会社を辞めたいというのです。突然のことで驚きました。理由を聞くと、
体がしんどいと言っていましたが、それは本心でないことはわかって
いました。説得しても、聞く耳を持たないので、会社に戻り主人に
話しました。主人は彼がいないのでとても忙しくしていましたので、
今度の日曜日に彼に会って説得するといっていました。翌日のお昼に
私は用事があるといって会社を出ました。お昼のお弁当を買って彼の
アパートへ向かいました。愛想の無い彼は黙ってテレビを見ていました。
私は、お茶を入れるねといって台所でお湯を沸かしました。
私はだんだん悲しくなってきました。私の話した言葉で彼を傷つけて
しまったことへの後悔と自責の念からでした。涙が出てきてしまいました。
そんな私に気づいた彼は、声をかけてくれました。そして彼が本心を
話してくれたのです。彼が、私の言葉で、私との関係がおかしくなり、
会社を辞めるといったのは、私が彼に聞いた彼の恋愛の話が原因でした。
彼は女性との恋愛どころか、経験もまったく無いといったのです。
だから、その質問をされて、体の特異性よりも男として侮辱されることの
恐怖心から、私との関係を、維持できなくなり、会話もできずに、そして
会社を辞めると決意したと話してくれました。そして、私のことを
憧れの存在として胸に秘めるようになったからこそ、余計にショックは
大きくなってしまったといいました。主人に殴られるのを見て、もし
自分がまともな体なら、私を守ってあげることもできたのにと、悲しそ
うに話したのです。私は、彼の話を聞いて涙を流している場合ではない、
彼のほうがずっと何倍も悲しくてつらいのだと知りました。
沸いたお湯のコンロの火を止めるため彼がいすから立ち上がってそばに
来ていいました。私は彼に抱きついて、ごめんなさい、ひどいことを
聞いてしまってと謝りました。彼は、一瞬戸惑っていましたが、もう
いいからといってくれました。子供の背丈の彼の背中に回した手が
背中のコブをつかんでいました。さわったのは初めてでした。