車はいつしかホテル街に入った。不思議なことに奥さんは、黙ったまま何も言わない。チラッと横をみると奥さんは下を向いたままうつむいていた。気のせいかうっすらと顔が赤く紅葉している。僕は目指すホテルを見つけると勢いよく中に車を入れた。「着いたよ。」奥さんは何も言わずうつむいている。僕はエンジンを止めて、先に車を降りると、助手席のドアを開けて「さあ、降りるんだ。」いつしか命令口調になっていた。「やっぱり私…」とっさに僕は口走っていた。「何言ってるんだ!旦那さんなばらされてもいいのか!バイト先のコンビニの店長とふしだらな関係だって!」「そんな…」「いいから早く来るんだ!」僕は強引に奥さんの手をつかみ引っ張っていった。コンピューターのガイダンスに従って、さっさと部屋を決め、エレベーターに乗ってランプの点灯している部屋に入った。怯えたような奥さんの顔を見たら、はっと我に返った。「ごめんなさい!こんなことするつもりじゃなかった!」「えっ」急に変わった僕の態度に奥さんは戸惑っていた。「ごめんなさい。帰りましょう!」僕はさっきまで取りついていた何かが消えたかのように、急に弱気になった。「とにかく、こんなことはまずい!帰りましょう!」「え、ええ…」僕は奥さんの手をひいて部屋を出た。清算を済ませを車に乗るとホテルを後にした。