妻の浮気相手を見て私は絶句し、その場に立ちつくした。
(前回まで)
私の目の前にいる男は、
「Nさんこんにちわ。一週間ぶりですね」と言うと、「ニヤリ」と笑った。
その男の名は「S村新一」、なんと例の新ちゃんである。
私「・・・。新ちゃん。なんでアンタが・・・。」
新「なんでって、奥さんの浮気の相手は俺だからだよ」
妻「ネッ。言ったでしょ。会わない方がいいって。」
私「一体どういう事なんだ?。今まで一言だってこんな事いわなかったじゃないか。楽しく酒を飲んでいる時だって。」
私は付き合いはまだ浅いが、一緒に酒を飲んでいる時に見せるこの男の屈託のない笑顔が頭に浮かんだ。
新「まぁ詳しい話は後にして。・・・そんな事より、奥さんから聞いたんだけど、Nさんの作り話の中に俺が登場してるんだってね。それを聞いた時は、大笑いしたけど一瞬「怖く」なりましたよ。実は前から我々の関係に気がついていたのかと。別にバレても構わなかったけど、もっと衝撃的に気が付いてもらいたかったから・・」
私「なんだって!。何言ってるんだよ。人の女房と浮気をしているのに、なんでそんなに平然としていられるんだ!」
私はこの時点では、まだ二人の言動が理解出来なかった。
妻「それじゃ私が説明してあげるわ。」
妻「あなた、恵子さんて知っているわよね?」
妻は突然「恵子」という女の名前を出して、私の顔色をうかがった。
私「・・・・・」
確かに恵子という女は知っている。半年前に知り合い、二・三度ホテルに行った仲だ。しかし、旦那に浮気がばれて、その後は会っていない。
妻「あなた、その恵子って人と付き合っていたでしょ。私よく知っているのよ。隠していても。」
私「・・・・・」
新「Nさん、実はその女、俺の女房なんだよね」
私「・・・・!」
新「今日は恵子も連れて来ようとしたけど、どうしてもイヤダと言うんで・・」
私「・・・。でもどうしてアンタの奥さんと浮気している事がわかったんだ?」
新「ハハハ。それがね、Nさんの作り話そのままなんだよ。偶然、おたくの車とすれ違った時にね、女房が助手席に座っていたのが見えたんだ。それも楽しそうにね。俺はあわてて後を追ったんだ。そしたらなんと、昼間っからラブホテルへゴーだぜ。あの時はさすがの俺もア然としたよ。・・・。帰ってから女房に言ったら、あっさりと白状しやがった。そして、おたくの事も色々と聞いた。」
この後、新ちゃんことS村の話が長々と続いた。
・まず、私よりも先に妻と会い、事の真相(夫の浮気)を話した事。
・妻も私の裏切り行為に対して、激高し仕返しをしたいとS村に話した事。
・二人がいつの間にか、深い仲になってしまった事。
・居酒屋で私に探りを入れていた事。
・そして、これからどうするか等々。
そこでは、浮気をしているにもかかわらず、勝ちほこった顔つきで喋っている二人と、もう一方で被害者(?)である筈なのに、なぜか肩を落とし「うなだれている」私の姿があった。
そして、S村の帰り際、得意そうな態度の彼に対して、苦しげに顔を歪めた私の口から出た一言は、
「セックスは、俺の方が上手いんだゼ!」
馬鹿は死ななきゃ治らない・・・。