三週間前のコト。俺は嫁の里緒と喧嘩をした。
普段から色々と里緒に対して不満を抱いていた俺は溜まっていた愚痴や怒りをぶちまけた。
だがそれは里緒にしても同じだったらしく、口論は歯止めが掛からず激しさを増し、しまいには里緒が家を飛び出していった。
怒りに冷静さを欠いていた俺も、それを止めるでもなく里緒に罵倒の言葉をあびせてそれを送り出した。
それが午後七時頃だったと思う。
それから一時間経ち、二時間が過ぎても俺の感情は静まらず苛立たしい気持ちでいると、里緒から電話がかかってきた。
「なにしてんだ!」
電話に出た俺の第一声に反感を感じたらしい里緒は「あんたには関係ないでしょ」とだけ言い、直ぐに電話は切れた。
その時、電話から聞こえた周りの喧騒から、里緒が居酒屋などの店にいることが知れたが、俺は何をするでもなく無視していると、程なく携帯に一通のメールが届いた。
送信者は里緒。ファイルを開いてみると『今日は帰らない』とだけあった。
俺は返信を送ることもせずそれも無視。
さらに二時間も過ぎた頃、再び里緒からのメールが届いたが、それは本文もかかれていない空メールだった。
俺は短く『なんだ?』とだけの返信を送ると、すぐに一枚の写メ画像が添付されたメールが届いた。
そこにはブラジャーだけを着けた里緒が両手で胸を寄せ、意地の悪そうな笑みを浮かべる上半身を映した姿があった。
直ぐ様俺は里緒の携帯に電話をかけたが3コールもしないうちに切れた。
それから、同じく続けて電話をかけるが、やはり切れる。
四度目にかけたとき、やっと電話が繋がったが、その相手は俺の知らない男の声で『すみません。終わったら奥さんに掛け直させますんで失礼します』と一方的に、慇懃だが嘲りを含んだ言葉と、その傍らにいるらしい里緒の笑い声が聞こえてすぐに切られた。
それからは何度掛け直しても携帯の電源を切ったらしく電話は繋がらず、時折思い出したように画像のみのメールが俺に送られてきた。
そこには、もはや下着さえ身につけていない里緒が、男のモノを口に含み上目遣いにカメラを見ているものや、里緒の乳房に手を添えて男が吸い付き、里緒が腕を伸ばして自分で撮影しているモノもあった。
そして……里緒の中に男のモノが挿入されている結合部をアップで写した画像を最後にメールも送られて来なくなった。
午前四時を過ぎる頃までは起きていたが、それでもいつのまにか眠ってしまっていた俺は携帯の着信音で目が覚めた。
慌てて取ろうとしたが、寸前でそれは切れ、時間を確認すると午前六時前くらいだったと思う。
携帯を手に取るとメールも入っていた。
だが、それは後回しにして電話の受信履歴を表示すると里緒の携帯からのものだった。
コール時間は22秒。それに掛け返す。
すると里緒の携帯にはまた男が出て『あんた自分の嫁が他の男に犯れてたってのに寝てただろ?』と言った。
事実だが、それよりも怒りでうまく言葉が出なかった。
男は俺が無言であっても気にした風もなく話し続けた。
『まあ、オレも奥さんと一緒に寝てしまってたんだけどな。さっき送ったメール見たか?……奥さんはまだ寝てるけど、起きたら電話させるから。じゃ……』
それだけ言うと男は電話を切った。
俺は沸き上がる怒りでしばらくなにも手に付かず呆然としていたが、男の言っていたメールが気になって携帯を操作した。
送られて来ていたメールは3件。
見たくないという葛藤した思いを抱きながらも、俺はそのファイルを届いた順に開いていった。
一つ目の画像には、今までの状況から考えて里緒以外に有り得ない、脚を大きく開いた股間のアップが映っていた。
その画面中央にある割れ目から男のモノが引き抜かれ、ピンク色をした使用済みコンドームだけがそこから垂れ下がるように残っていた。
考えたくないが、里緒と男は行為が終わった後、繋がったまま眠りにつき、先に目覚めた男がそこに残された行為の名残を撮影したのだろう。
続いて二つ目を開くと、男の指が引き抜いたゴムを逆さにして摘み、その装着口から垂れた精液が里緒の股間……パックリと開いた膣口に滴っているものだった。
それを見ても俺にはなんの感情もわかなかった。
頭のどこかでもう終わったこと……為す術もなく、ただ送られてきた画像を見ることしか出来ないのだと理解していたのかもしれない。
そして三つ目。
それはわずか15秒足らずの短いムービーだったが、俺は喧嘩をしても……俺に対する当て付けに、知らない男との浮気という行為で復讐しようとした里緒に、それでも残っていた愛情が冷めていくのを感じずにはいられなかった。
そこに映し出される映像はやはり里緒の局部を撮影したものだった。
男の指が、里緒の膣口を汚す男自身の白濁した精液をすくい割れ目に塗り込んでいく。
男の無言で行われる作業に映像と共に聞こえてくるのはクチュクチュという音のみ。
そして男の……精液に塗れた指が里緒の膣を探るように蠢くとその中に侵入していった。
男の指が2、3度の出入りを繰り返したところでムービー画像は終わり、携帯画面には撮影日時が表示されていた。
その日の昼過ぎに帰ってきた里緒と俺はやはり激しく喧嘩をした。
他の男に抱かれようと思うほど俺に対して嫌気がさしたのか……などと。
結局、数日を経て最終的には俺が謝ることで表面上は二人の仲は以前のようになったが、里緒の生理予定日を過ぎた今日になっても月経が来ていない。
妊娠したんじゃないかと喜ぶ俺に比べ、最近の里緒は情緒不安定になってきているが、安定期に入るのを待って、俺は里緒の抱えている不安を取りのぞいてやりたいと思っている。
あの電話の数分前の里緒がまだ眠っている間に撮影された15秒足らずのムービー画像を見せてやることで……。