約束の時間にあの男がきました。
「申し訳ありません。」
リビングに入ってくるなり,いきなり土下座して謝りました。
「まぁ座りなよ。謝っても許さないから‥」
「でも‥申し訳ありません。」
「どうしよっか?」
「あの‥私も家庭がある身で‥逆の立場だったらと思うとご主人のお怒りもわかります。」
「うん。」
「奥さまとは別れるべきと思い‥」
「別れられるの?」
「はい‥そのつもりです。」
「あっそう。」
「俺はさ‥一番ショックなのは,信じてた女房に裏切られた事なんだよね。正直なとこ,コイツに今は以前の愛情の半分もないからさ。一昨日からほとんど,話しもしてないから‥俺に<ごめんなさい>とか謝るけど本当に罪悪感,感じてるのかな‥ってそこまで疑っちゃうよ。だからアンタは別れるって言うけど,はたして本当かな‥って思うよ。」
「本当‥私もそのつもりだから。」
「俺は〇〇さんと話してんだよ!お前は黙ってろ!」
「申し訳ありません‥別れますので‥」
「そう。俺の言いたいのはさ‥正直,愛情もなくした女房とアンタが別れようと続けようとあまり,関心がないって言うかさ。それ位,冷めちゃってんだよね。たださアンタに対しては大切にしてた家庭をブチ壊した責任はとってもらうから。やられたらやり返すじゃないけど,アンタの守ってきた家庭をブチ壊してやるよ。寛容な奥さんなら許してくれるだろうし‥そうなりゃ,アンタの奥さんは当然,コイツに慰謝料を。って事になるし,俺はアンタからしっかり取るからさ。うちが離婚って事になれば当然,俺はコイツに対しても慰謝料取れるけど‥世の中ってそう言うモンでしょ。」
「はい‥」
「多分,うちが離婚って事になってもコイツからは慰謝料なんて取る気はないけどさ。コイツの親父さんもお母さんも,良い人でさ‥俺は元々,親父がいなかったから(親父ってこう言うモンなんだ。)って自分の子供みたいに良くしてくれてさ。だから,そんな人達をできたら悲しませたくはないしさ‥悲しませる様な事したお前らが本当,許せないよ。わかる?」
「はい。」
「アンタだってそうだろ。俺はアンタに対してはしっかり取るつもりでいるけど自分で始末できるのか?」
「はい‥。」
「アンタの人生,終わりにして借金作ってでも用意しろ。嫁さんに相談もできないだろうし結局バレんだよ。とりあえず5千万だ。」
「無理です‥」
「じゃ裁判だ。」
「この通りです。お許し下さい。」
「ダメだ。」