妻による浮気の余波はみんなの生活を変えた
明らかな倦怠の中で一人恍惚とする妻
この家のありとあらゆるすべてのものが終わりに向かっていた
妻だけがその中で産声をあげた子牛の咆哮の中に佇んでいる
一切の思考を停止させた妻は子宮だけを妖しく収縮させていた
消えた声の持ち主を探し出すために今日も彷徨う
子供達は三様に歩みだし老いた者達はオロオロ嘆くばかり
この家では私だけが唯私だけが思索を巡らす特権を与えられた
しかしながら想いに巡って来るのは空虚な抜け殻だけだった
消えた声の持ち主を探し出すために今日も彷徨う
ひとしきり降り続いた雨の向こう側に虹は輝かない
暫くして妻が囁いたような気がした
妻には自分自身の行く末の決定権すら与えられなかったが
あの時あの場では誰もがそれが一番妥当な選択肢だと思っていた
各地に光臨する天使は不幸しか齎さないことは周知の事実でありながら
消えた声の持ち主を探し出すために今日も彷徨う