妻の郷里である、山間僻地の分校勤務です。僻地振興とやらで、立派な道路
ができましたが、要するに僻地の労働力を都市に吸い取られただけ。男共は
皆、町の工場へ働きにで、昼間のこの地区には、畑や繁殖牛の管理をする母ち
ゃん連中しか残っていません。
パチンコ屋も飲み屋もないこの地区では、娯楽と言えばアレ、しかありませ
ん。休日は二三軒が組になり、共同で山仕事に励みます。山仕事の楽しみは、
休憩時間の昼寝です。その時は皆、互いに一人ずつ、場所を選んでひと時のま
どろみを楽しみます。一人ずつ、バラバラに寝場所を求めていたはずなのに、
起きるときはたいてい、夫婦以外の相手と二人組みになっています。つまり最
初は、男共が互いに離れたところへ寝場所を選び、次に奥さん連中が、夫以外
の男のところへ忍びより、楽しいひと時を過ごします。
浮気とか不倫とか、そんなどろどろしたものではなく、ただの楽しみのため
の交合なのです。主導権は奥さん連中にあるらしく、共同作業する相手の選択
が奥さん達に任されています。
ある奥さんが、あそこの亭主と楽しみたいと思えば、その家の奥さんに、今
度の休みに組になろうと申し込み、申し込まれた奥さんが、申し込んだ奥さん
の旦那と楽しんでもよいと思えば、今度の休みの共同作業する夫婦の組み合わ
せが決まるわけです。組んだ夫婦の数が多いときは、作業時間より休憩時間の
ほうが多くなり、疲れも深くなるのは、言うまでもありません。
単身赴任の私は、休日はお呼びじゃないですが、平日、家庭訪問を熱心に続
けさせてもらっています。家庭訪問といっても、家に行っても皆留守。母ちゃ
んたちが仕事をしている、山や畑の木陰で胡坐をかき、作業服を脱いでお尻を
丸出しにした母親を膝の上に抱きかかえながら、お宅の子供は勉強を頑張って
ますよと、そこはボディートークで。たまに通りがかりの小母さんに見つかる
ときもありますが、そんなときは大変で、私にも楽しませてと、連戦を求めら
れてしまいます。
村中が穴兄弟、竿姉妹のような地区ですから、全員が家族付き合いしている
のも、当然なのでしょう。そういえば、同じ地区同士の者の結婚は、タブーと
されています。子供の母親ははっきりしていますが、その父親は、地区の誰か
である可能性が極めて高いので、それも当然なのかもしれません。
自分のふるさとと言うことで、お祭りの時期など、機会を見つけては妻も、
積極的に帰郷します。その時期には幼馴染だと言う男共が、大勢揃っていま
す。昼間の、私の授業時間中だけでのお付き合いでは、足りないのでしょう
か、同期会だとか地区会だとか、理由をつけては夜も出歩き、帰宅は深夜。い
つも数人が組んで送ってきてくれます。やっぱり妻も、この地区特有の娯楽を
楽しんでいるのでしょうね。