その日は妻が寝室に来なかったので口をきくことはありませんでした。
翌朝、居間に起きていくとソファに妻が座ってうつむいています。
寝ていないのか、憔悴しきった様子でした。
「おはよう、俺に何か言うことないのか?」
「・・・・。ごめんなさい」
「俺が許せないのは、昨日念を押して聞いたときもシラを切ろう、隠そう隠そうとしたお前の人間性だ。俺が携帯に気が付かなければとぼけ通すつもりだったんだろ? 課長のやつも隠れてコソコソやりやがって絶対許さないからな。おまえとやつがどんな事してたかなんてもうどうだっていい。
今日会社でな部長の前ででも話を切り出してやるよ。
俺はもう恥をかこうが関係ないからな。おまえは昨日言った通りに市役所
で離婚届をもらってこい。荷物もまとめといた方がいいんじゃないか?
それと携帯はもう取り上げるからな。」
やつに状況を教える可能性があったからです。
妻はただ泣いているだけだった。私はそれを無視して会社にでかけた。
会社で課長と会うと、課長は目をそらした。私はその時は黙っていいタイミングを待った。午後になって課長が部長に呼ばれた。
二人の話が終わる頃合を見て席を立って近づいた。
「課長、ちょっとお話よろしいですか?」
「なんだ、今部長と話しているところだろう」
「私は部長がいていただいても構いませんが。」
「部長、では先程の話まとめておきます」
課長はそう言うと私の腕を引いて部屋の外に連れ出しました。
「どういうつもりなんだ、部長の前で。」
「どうもこうもないですよ。ご自分の胸に聞いてみたらどうですか」
「君は何か勘違いしてるんじゃないか?きのうの電話のことか?」
「昨晩家内がすっかり自白しましたよ。もう観念した方がいいと思いますよ。」
課長は完全に動揺して「俺が誘ったんじゃない。おまえの女房が悪いんだ」
「あんた、男らしくないね。てめえは悪くねえってそんなのが通用するか。
そういえば課長は婿養子でしたね。奥さんや奥さんの親にばれたら離縁かな?まぁ覚悟しといてください。」
私はその日はそれで話を切り上げました。
仕事を終え家に帰ると居間に妻がいました。
「ただいま、離婚届はもらってきたか?」
「ごめんなさい、今日は家から出る気分になれなくて取って来てません。」
「おまえの気分で決めるな。役所には夜間受付とかやってるだろ、今から取 って来いよ」
「あなた、離婚だけは考え直してください。もう絶対に浮気なんかしません から」
「もうダメだよ。俺は浮気したことは過ちということもあるから許せなくも ないけど、それよりも昨日見てしまったお前の人間性がもう信じられない んだ。もうそんな人間と一緒に暮らしていくことはできないよ。
せめて子供がいないうちでよかったと思うよ。」
そうこうして結局、私たちは離婚しました。課長にも相応の償いをもらいました。妻のその後はかわいそうだけどわかりません。
またまた長文ですみませんでした。