鳥インフルエンザのあおりを受けたのはダチョウ牧場とて例外ではなかった。
そんなダチョウたちを見かねて妻は立ち上がった。
ダチョウの着ぐるみを着て客引きをするというのだ。
そんなことで客が集まるのか?と信じられない気持ちであったが、
みごとに客を呼ぶ起爆剤となった。なんともセクシーな着ぐるみで
頭にダチョウの首をかぶり、手に羽根を装着し背中に背負った胴体部分に
沿わせて、足は黄色いタイツ、体の前面は茶色のレオタードを着た
そのままなのであるが、薄手であるのと、手を後ろにして胸をつきだしているのと
なんとブラをしてないので裸同然乳首丸見えスタイルなのだ。
噂が噂を呼び、オヤジたちに大人気。集まってきたオヤジたちに
ダチョウの刺身を振舞うのだ。これがまたくせがなく牛肉のタタキみたいに
美味く酒によくあうのだ。ズリやキモも生で食べれるのは新鮮ならではこそ。
最初の一皿は無料、二皿目以降と酒は有料で、酒が進むうえにダチョウ以外に
ツマミがないので飛ぶように売れた。最初は妻一人だったのだが
ダチョウホステスということで10人くらい新規に募集して
ダチョウ酒場になった。いろいろと給仕をしないといけないので新規の10人は
略式のダチョウの着ぐるみで妻だけがダチョウらしいダチョウになった。
順調に売上を伸ばしていったダチョウ酒場であるが、酒場に酔っ払いは
つきもので、あるとき酔っ払いが妻ダチョウにからんできた。
「ここは人間様の場所じゃねぇか。ダチョウは檻の中に入っちめぇ。」
妻は泣いて断ったが客は許してくれない。しかたなく檻の中に入った妻に
本物のダチョウたちの総攻撃。突付かれまくってまたたく間にレオタードも
タイツもビリビリに破られてしまった。羽根を支えるため後ろ手で
縛り付けられてあるので胸も局部も隠す事すらできず檻の中を逃げ惑う妻。
ダチョウたちも心得たもので突付きはするものの妻に怪我を負わすことはない。
それでも必死の思いでようやく檻の外に逃れてきた妻をオヤジたちは
オモチャにしやがった。私も心配で見にきてはいたのだが、その場の異様な
雰囲気に呑まれて、私の妻になにをする!と飛び出していくこともできず
じっと草むらに隠れて一部始終を見守っていた。ひととおり満足させてもらった
妻はこの仕事を続ける気マンマンであったが、オーナーがやばい事に手を
染めるのはごめんだ、とダチョウ酒場を閉店してしまった。
妻は今密かに再建を計画中だ。