世間ではクリスマス、でも単身赴任中の俺はひとりぼっちのクリスマスを部屋で過ごしていた。
コンビニで雰囲気だけでもと小さいケーキと言うより洋菓子みたいなのを買った。
単身赴任になって三カ月、それまであまり寂しいとか感じなかったが、その日は無性に寂しいと思った。
今頃うちでは10才の娘と5才の息子と妻が、クリスマスをしているんだろうなと思い、買った洋菓子を口にしたら涙が出てきた。
うちに電話しようと携帯に手を伸ばしたとき、俺の携帯がいきなり鳴り響いた。
妻の実家からの電話だった。
なんだろうと思って出てみる。
「パパ~?」
なんと娘の声だった。
周りの騒がしい声に紛れて、息子が何かを叫んでいるのも聞こえて、妻の怒鳴り声も聞こえた。
「今、おばあちゃんちでクリスマスしてるよ~」
と娘が続けた。
「どうしておばあちゃんちにいるの?」
と聞いた。
「おじさん(妻の兄)がうちでみんなでやろ~って誘われたんだよ~」
「そうかそうか」
「そっち寒くない?」
「雪降って寒いよ」
「やっぱり?テレビでそっち雪だって言ってたもんね」
また息子の叫び声が聞こえた。
どうやらお姉ちゃんに代われと要求してるみたいだ。
「パパ」
息子がでた。
「次いつくるの?」
泣きべそかいてる声を聞いて、俺もまた涙が出てきた。
「うん、30日に新幹線で帰るよ。夕方前には帰るからね」
「早く帰ってきてね」
次は妻がでた。
「30日でしょ?」
「あぁそうだ、送ったプレゼント届いたか」
「うん、それ渡したらパパに電話するってなってさ」
「そこでクリスマスやるんなら、〇ちゃん(妻兄の子供)達の分も送れば良かったな」
「急に今日決まったんだから大丈夫」
妻の兄や妻のお父さんとも話した。
みんな俺の単身赴任を気遣ってくれてるんだと思った。
電話の向こうでは娘や息子、妻兄の子供達がワイワイしていた。
電話を終えて切った。
少しして妻からメールが届いた。
子供達がプレゼントかかえて満面の笑みの写メだった。
そして本文にはこう書かれていた。
「私も年末、帰ってくるの楽しみに待ってます×10」