大学に入学して間もない春のある日、
田舎者の私は「都会の風俗街ってどんなものだろう?」
という素朴な好奇心から、拙い知識を基に阪急十三駅に出向いた。
駅周辺を散策しながら成人映画館の看板を眺めたり、パチンコ店に入って様子を眺めたり、
マッサージ等の怪しげなお店の前をうろうろしていた。
呼び込みや怪しげなおばさんと視線を合わせないように、
歩いていると突然、後ろから声を掛けられた。
女性「ぼく、何をしてるの?」
ドキッとして振り向くと目鼻立ちのはっきりした女性と
恰幅のいい男性がニコニコしながら立っていた。
私「えっ、いや・・・。」
何と答えていいかもわからず口ごもっていると、
女性「私たち歩き疲れて、お茶でもしようと思ってるのだけど、ぼくも行かない?」
男性「おごるからおいでよ。怪しいものじゃないから。」
と穏やかな口調で話しかけられた。
私「何かヤバいかな?宗教の勧誘?(内心)」
と思ったが、女性がとても優しい笑顔で
男性も見るからに人の良さそうな雰囲気だったので
私「何かあれば逃げればいいや。(内心)」
私「いいですけど、ぼく、この辺のこと知りませんよ。」
という言葉が口からこぼれていた。
男性「ああ、いいよいいよ。話がしたいだけだから。」
女性「行こ、行こ。」
という流れですぐそばの建物2階にある喫茶店へ行くことになった。
それがこの夫婦との長い長い付き合いのはじまりとは気づかないまま・・・。