離婚に至った理由のすべてを受け止める事ができたのは、離婚から10年、一人娘が成人した時でした。
年頃の娘を持つ私は、再婚どころか恋愛さえ避けてきました。
でも、娘が成人して、ああ、いつか娘が一人立ちしたら私は独りぼっち・・・そう思ったら、あなたが全てを捨てて帰郷した気持ちが少しわかりました。
お父さんを亡くして6年、七回忌に見た病気がちのお母さんを独りにしておけなかったあなたの気持ち、あの時はわかってあげられませんでした。
「俺と田舎に引っ込んでくれないか?」
あなたは仕事を辞めてまで、一緒にあなたの実家に帰ってほしいと言いましたが、私は東京を離れたくありませんでした。
結婚生活12年、あなたは私と娘を置いて出ていきましたね。
家も、財産も全て私たちに残して、あなたは一人、故郷へ戻っていきました。
年に二回届く養育費、ありがたいと感じていました。
だから、娘が成人したのに送られてきた養育費、これまでの御礼かたがたあなたの元を訪ねて、直接お返ししようと思ったのです。
新幹線で1時間半、あなたの住む街を久しぶりに訪れました。
懐かしい街並み、二両編成の電車がゴトゴト走る懐かしいローカル私鉄に乗って、あなたの住む最寄り駅に降り立ちました。
あなたの家に向かう途中、小学一年生くらいの女の子と30代後半くらいの女性と三人で歩くあなたを見つけました。
あなた・・・再婚なさったんですね・・・お子さんも・・・
私は、とっさに物陰に隠れて、あなたとご家族をやり過ごしました。
田舎でほのぼのと暮らすあなたが幸せそうに見えて、なんだか嬉しくなりました。
だから、私は今来た道を戻って、またローカル私鉄に乗って、新幹線で東京に戻りました。
あなたを一人で追い出したみたいだったから、幸せそうなあなたを見てうれしかったのと、それから、やっぱりあなたが好きなんだと気づきました。
娘がいるから恋愛しないんじゃなく、元夫が恋しくてたまらなかったのですね。
でも、しっかり前に進んでいるあなたを見たら、私も前に進まなくてはと思いました。
新幹線の中で、あなたに抱かれた最後の夜を思い出していました。
愛しいあなたが私の股を割って、優しく舐めてくれたあの快感・・・優しい舌使いで私の恥ずかしい裂け目を舐めてくれました。
あなたの脈打つ熱いもの、お口に入りきらないほど大きくなったもので体を貫かれ、あなたにしがみついて蕩けていった私・・・私の名を呼びながら、抱きしめてくれたあなた・・・もう、とっくに私のものじゃなくなっていました。
気が遠のいていく私・・・あなたはラストスパート・・・そして、最後の精液を浴びた時、それが夫婦としてのお別れでした。
東京に戻りました。
昼間、私が立ち止まって物陰から見たのは、 元夫の幸せそうな後ろ姿でした。
だから、もう恋しいなんて思いません。
「さよなら、あなた・・・お幸せに・・・そして、どうかお元気で・・・」
そう言いながら新幹線を降りました。